「就寝前にはカゼインプロテインが有効」
ホエイに比べるとマイナーなカゼインプロテインですが、就寝前のプロテインとして根強い人気があります。
一方でカゼインは筋肥大に効果がないとする研究結果が報告されています。
この記事では、カゼインに関する様々な研究結果を紹介しながら、カゼインプロテインのデメリットや正しい摂取方法を追求していこうと思います。
この記事を読むと分かること
- カゼインプロテインの特徴
- カゼインが効果あるとする研究例
- カゼインとホエイの比較研究結果
- カゼインの効果的な摂取方法
目次
カゼインプロテインの特徴
カゼインプロテインの”カゼイン”は牛乳に含まれているタンパク質の一つです。
牛乳はホエイとカゼインの2種類に分けることができます。
その比率は、プロテインとして有名なホエイが20%、カゼインは80%となっており、カゼインの方が主成分になっています。
ホエイとカゼインは製法も異なります。
ホエイプロテインは牛乳を発酵させて得られるチーズホエイ(チーズの副産物)からタンパク質を抽出して製造されています。
一方、カゼインは牛乳そのものを遠心分離と呼ばれる方法で脂肪分と分離させたものから作られます。
カゼインプロテインの最大の特徴は「吸収速度が遅い」ことです。
ホエイは吸収が速いので、トレーニング後には優れているものの、就寝前や食間などには吸収が遅いカゼインが有効だといわれています。(真偽は後で説明します。)
プロテインの吸収速度の違い
- ホエイプロテイン:1~2時間
- カゼインプロテイン:6~8時間
- ソイプロテイン:5~6時間
就寝前のカゼインは筋肥大を促進する【疑惑】
カゼインの筋肥大への影響は数多く研究されており、とくに就寝時のたんぱく補給に優れていると結論づけているものが多いです。
しかし数あるプロテインの中で、本当にカゼインが就寝時のタンパク質補給に適しているのでしょうか。
カゼインの効果を検証した研究には”疑惑”が残っています。
ホエイよりも長く血中アミノ酸濃度を高く保つ
次のグラフは、ホエイとカゼインを摂取した後の血中ロイシン濃度になります。[1]
これを見ると、カゼインの方が3時間後以降の血中ロイシン濃度を高く保つことができているように見えます。
このグラフはカゼインのメリットを説明する際によく使われていますが、実はある問題があります。
ホエイとカゼインで摂取量が違うのです。
この研究ではロイシン濃度を同じにするため、ホエイ30gに対し、カゼイン43gを摂取しています。
たくさんのプロテインを飲めば、それだけ血中ロイシン濃度を高く保つことができるのは当たり前です。
それゆえにこのグラフだけではカゼインプロテインは本当に効果的か分からないのです。
カゼインは筋肥大を促進する
ほかにもカゼインを摂取することで、実際に筋肥大が起きたとする研究結果もあります。[2]
この研究では12週間の試験中、トレーニングに加えて、「カゼインプロテインを飲んだ場合」と「水を飲んだ場合(プラセボ)」で筋断面積の変化を比較したものになります。
こちらが筋断面積の変化量です。
グラフからカゼインプロテインを飲んだ場合、1.5倍以上も筋肥大が起きていることが分かります。
ホエイと比べて筋肥大が起きているのであれば、信ぴょう性がありますが、比較対象がタンパク質を含まない水なので、これだけでカゼインプロテインが優れているとは言えません。
カゼインは筋肥大効果が低い【事実】
カゼインはホエイに比べて吸収が遅く、長時間体内に残存することから、就寝前や食間に飲むプロテインとして推奨されてきました。
しかし、実はホエイよりも筋肥大効果が明らかに低いことが分かっています。
この原因は「血中の必須アミノ酸濃度」と「血中ロイシン濃度」の二つで説明することができます。
カゼインの筋肥大効果が低い理由
- 血中必須アミノ酸濃度を上昇させにくい
- 血中ロイシン濃度を高めることができない
カゼインとホエイを摂取した後の血中アミノ酸濃度と筋合成速度を調査した研究を紹介しながら説明していきます。[3]
カゼインは血中アミノ酸濃度を上げにくい
カゼインは血中アミノ酸濃度を上げにくいことが分かっています。
今回紹介する研究では等量に近いタンパク質のホエイとカゼインを比べているので、カゼインがほかのプロテインと比べて筋肥大を起こしやすいのかどうかがはっきり分かります。
こちらのグラフはホエイ・ソイ・カゼインの3種類のプロテインを摂取した後の血中アミノ酸濃度を比較した結果になります。
ホエイは摂取後すぐに血中アミノ酸濃度を上げますが、カゼインにその効果はないことが分かります。
カゼインは「長い時間アミノ酸レベルを保つ」といわれていますが、摂取から3時間後のアミノ酸レベルをホエイと比べても有意な差がありません。
ホエイと同量のカゼインを飲んだ場合、カゼインには血中のアミノ酸レベルを上げる効果が低いといえるでしょう。
カゼインはロイシン濃度を急上昇できない
続いて、血中ロイシン濃度を比較したグラフを見ていきます。
ロイシンは必須アミノ酸のひとつで、筋肥大にもっとも大切なアミノ酸ともいわれます。
ロイシンは筋タンパクを合成するmTORシグナル伝達回路を活性化させ、筋肉の合成スイッチが押す役割を持っています。
またロイシンはタンパクを分解する酵素の働きを阻害する効果も持っていることが分かっています。
筋合成を促進して、筋分解を阻害することで、筋肥大に有利な環境をつくってくれるのがロイシンになります。
(☐ホエイ、△ソイ、〇カゼイン)
血中アミノ酸濃度と同じくロイシン濃度の面からもホエイが優れており、カゼインはロイシンレベルを上げる効果が低いことが分かります。
筋肥大に直接関係しているロイシンレベルを上昇させることができないカゼインは筋肥大効果が低いと考えて問題ないでしょう。
カゼインはホエイと比べて筋肥大効果が低い
最後に、ホエイとカゼインを摂取したあとの筋合成速度を見ていきましょう。
白の棒グラフは安静時にプロテインを摂取した時、黒の棒グラフはトレーニング後にプロテインを摂取した時のデータになります。
安静時、トレーニング後ともに「ホエイ>ソイ>カゼイン」の順番で筋タンパク合成速度が高まっていることが分かります。
安静時のホエイはカゼインよりも93%高く、ソイよりも18%高くなっています。
またトレーニング後のホエイはカゼインよりも122%高く、ソイよりも31%高くなっています。
カゼインはトレーニング直後だけでなく安静時の筋肥大効果も低いということになります。
吸収が遅いという理由で、カゼインを食間や就寝時に摂取しても筋肉の合成はあまり起きないのです。
筋合成速度の違い
- トレーニング後:ホエイ > ソイ > カゼイン
- トレーニング後以外:ホエイ > ソイ > カゼイン
どの場面でもホエイが優れていて、カゼインは劣っている
カゼインの効果的な摂取方法
カゼインはホエイやソイに比べて筋肥大効果が低いという悲しい事実が見えてきました。
カゼインの「吸収が遅い」という最大のメリットを生かす方法が一つあります。
それが一度に大量に摂取することです。
最初に紹介した研究結果をもう一度見てみましょう。
これはホエイ30gに対し、カゼイン43gを摂取した結果です。
20g程度のカゼインはほとんど血中アミノ酸濃度を上げることができませんが、40g以上摂取することで、平常時よりも高いアミノ酸レベルに上げることができます。
また摂取から7時間後でもロイシンが体内に残っているため、長時間筋肥大を起こし続けることができます。
ホエイプロテインは20~30gで筋肥大効果が最大になるため、それ以上摂取しても効果がありません。
しかしカゼインは吸収が穏やかなので、大量摂取しても無駄になることなく、長時間筋肥大を起こしてくれるのです。
カゼインの効果的な摂取方法
- 摂取タイミング:就寝前や長時間食事をとらない時間帯
- 摂取量:一度に40g以上
プロテインはホエイを選ぼう
カゼインプロテインは少量では効果が薄く、ホエイやソイに劣る面が多いです。
それを防ぐためには一度に大量に摂取することが大切になります。
ただホエイプロテインが一番優れていることに変わりはないので、カゼインがどうしても飲んでみたいという方以外にはおすすめしません。
まとめ
- カゼインの悲しい事実
- カゼインはロイシンレベルを上げにくい
- カゼインは筋合成を起こしにくい
- 摂取方法
- 一度に40g以上摂取することで体内のアミノ酸レベルを高めることができる
- 7時間以上アミノ酸レベルを維持できるので就寝前に効果的
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最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた!
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参考文献
[1]Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis at rest and following resistance exercise in young men.
[2]Protein Ingestion before Sleep Increases Muscle Mass and Strength Gains during Prolonged Resistance-Type Exercise Training in Healthy Young Men.
[3]Slow and fast dietary proteins differently modulate postprandial protein accretion.