ジムで背中トレをしている人を見ていると、ラットプルダウンをしている人ばかりで、懸垂をしている人をほとんど見かけません。
大胸筋はフリーウェイトが好まれるのになぜ背中はマシントレーニングが好まれるのでしょうか。
特に意味もなくマシンばかりやっていた方は背中を成長させるチャンスを逃していたかもしれません。
この記事では懸垂とラットプルダウンの違いと効率よく広背筋を鍛えるためのグリップ方法について解説していきますので、ここで得られた知識を次の背中トレーニングで活かしてみて下さい。
この記事を読むと分かること
- ラットプルダウンと懸垂は何が違うのか
- ナローかワイドのどちらが有効か
- オーバーかアンダーグリップのどちらが有効か
- サムレスグリップの効果
目次
懸垂やラットプルダウンで鍛えられる筋肉
カッコいい背中といえば「逆三角形」です。
逆三角形の背中を作るためには背中のアウトラインを作っている「広背筋」と「大円筋」を鍛えることが大切です。
広背筋と大円筋はどちらも機能が似ており、「内転」「内旋」「伸展」を行います。
腕を上に伸ばした状態から体幹へ戻す際の動作で広背筋と大円筋は強く働きます。
トレーニングでいうと懸垂やラットプルダウンの動きになります。
つまり懸垂やラットプルダウンでは逆三角形を作る「広背筋」と「大円筋」を鍛えることができます。
懸垂とラットプルダウンの違い
懸垂はバーに向かって体を引きつける動作なのに対して、ラットプルダウンは体は固定された状態でバーを引きつける動作です。
引きつけるという動作自体は同じですが、懸垂は両手の2点でしか固定されておらず、体がふらふらと動いてしまうので、軌道を安定させるために多くの筋肉が動員されます。
一方ラットプルダウンは両手に加えて、下半身が固定されているため、懸垂よりも簡単にできる分、使われる筋肉は少ないです。
ではラットプルダウンは初心者向けで、懸垂は上級者向けなのでしょうか。
確かに女性や運動歴がほとんどない初心者は懸垂ができないことが多いです。
ですが、1回や2回しかできないという理由で懸垂をやらないのは非常にもったいないです。
その理由は断然懸垂の方が筋肉を刺激できるからです。
対象とする筋肉を疲労させて筋肥大促すためには、より多くの筋繊維を動員させることが1番大切です。
筋肉は負荷が低いと全ての筋繊維を働かせず、一部の筋繊維だけで動作を行います。
つまりラットプルダウンで全ての筋繊維を疲労させることは難しいのです。
一方、懸垂は体が不安定な分、多くの筋繊維が動員して動作をおこなってくれるのです。
また筋肥大にはストレッチが大切だということが分かっています。
筋繊維はテンションがかかった状態で負荷がかかると損傷しやすいです。このテンションがかかった状態というのがストレッチ動作なので、いかにストレッチで高い負荷を与えるかが大切です。
ラットプルダウンはケーブルとプーリー(滑車)の間に摩擦が生まれるため、どうしてもネガティブ動作の際は負荷が小さくなってしまいます。
懸垂は常に自分の体重が負荷となるのでストレッチで負荷を与えるという点でも懸垂が有効だといえます。
懸垂とラットプルダウンの違い
- 筋肥大効果は「懸垂>ラットプルダウン」
- 懸垂は「筋繊維の動員数」と「ストレッチでの負荷」の二つの点で優れている
- 一回や二回しかできなくても、日々やっていれば確実に回数は増えていくので積極的に懸垂をやろう!
最適なグリップ
ナローかワイドか
まずはナローグリップかワイドグリップのどちらが有効であるか説明していきます。
広背筋の筋繊維の入り方を考えると答えが見えてきます。
広背筋上部は筋繊維が斜めに走っているため、斜め下方向に収縮させることで強い刺激を与えることができます。
一方広背筋下部は筋繊維が縦方向に走っているので、真下に収縮させることで発達させることができます。
次の写真は肩幅と同じくらいの手幅(=ナローグリップ)の時の筋肉の動きを表したものです。
バーを肩幅と同じくらいの手幅で握ると下方向に真っ直ぐ引くことになります。これは筋繊維が縦方向に走っている広背筋下部を鍛えるのに適したグリップになります。
つまり肩幅程度のナローグリップは広背筋下部に刺激を与えることができます。
下の写真は肩幅よりも広い手幅(=ワイドグリップ)の時の筋肉の動きを表したものです。
肩幅より拳一個分ずつ広く持つワイドグリップにすると、広背筋は斜め下に収縮します。筋繊維が斜め下に走っている広背筋上部を鍛えるのに適したグリップということが分かります。
つまりワイドグリップは広背筋上部に刺激を与えることができます。
オーバーかアンダーか
オーバーグリップとアンダーグリップには実は大きな違いがあります。
オーバーグリップの場合でバーを引きつける動作を行うと自然と腕が体の横を通るようになります。この軌道は収縮は強くかかりますが、ストレッチを完全にはしきることができません。
アンダーグリップは腕が体の前方を通るようになるため、ストレッチで負荷がかけやすく、収縮で負荷がかけにくいです。
これだけ聞くとストレッチで負荷をかけやすいアンダーグリップの方が良いように感じますが、実はそうとも限りません。
たしかにストレッチを重視するという観点で言えばアンダーグリップが優れていますが、上腕二頭筋が関与しやすくなるというデメリットがあります。
上腕二頭筋で重りを引いてしまっては背中トレの意味がなくなってしまいます。
まずはオーバーグリップで背中に大きな刺激を与え、その後アンダーグリップで追い込むことで広背筋を完全に疲労させることができます。
またアンダーグリップはナローグリップと相性がいいので、「オーバー&ワイドグリップ懸垂」⇒「アンダー&ナローグリップ懸垂」の順番で鍛えていくのがベストです。
背中トレにはサムレスグリップが有効
背中トレで1番やってしまいがちなミスが上腕二頭筋ばかりに効かせてしまうことです。
上腕二頭筋の関与が少ないオーバーグリップでも重量が上がるにつれて、上腕二頭筋を使ってしまいがちです。
そこでおすすめなのが「サムレスグリップ」です。(下の写真のB)
通常バーを握るときは親指は他の指と反対方向に巻きつけると思います。
サムレスグリップはあえて親指を他の指と同じ方向からまきつけるグリップ方法です。
サムレスグリップにすることで、親指や人差し指の力を減らし、薬指と小指で強く握ることができます。
実は親指と人差し指は腕の筋肉と強く関係していますが、薬指と小指はあまり関係していないのです。
つまり背中トレでサムレスグリップにして薬指と小指で握り込むクセをつければ、自然と上腕二頭筋の関与を減らし、背中で引く感覚を掴みやすくなるのです。
サムレスグリップはオーバーグリップだけでなく、アンダーグリップでも使うことができるので、背中トレ全般で使っていきましょう。
最適なグリップまとめ
懸垂やラットプルダウンのグリップ方法は広背筋の上部か下部のどちらを狙うかで決まることが分かりました。
最適なグリップをまとめると次のようになります。
最適なグリップ
- 広背筋上部狙い:サムレス(オーバー)×ワイドグリップ
- 広背筋下部狙い:サムレス(アンダー)×ナローグリップ
背中の広がりが欲しいという方は広背筋上部を優先して鍛える必要があります。
そこで「オーバー×ワイドの懸垂」⇒「アンダー×ナローの懸垂やラットプルダウン」の順に鍛えていくのがおすすめです。
2種目目のアンダー×ナローは高重量は扱えないのでラットプルダウンで丁寧に鍛えましょう。
広背筋を鍛えるトレーニングプログラム
広背筋を効率よく鍛えるためのトレーニングプログラムは次のようになります。
広背筋を鍛えるプログラム
第1種目「オーバー×ワイドグリップ懸垂」
- 重量:自重または加重
- 回数:5レップス以上(できない場合はジャンプしてネガティブ動作だけ)
- 注意点:ネガティブ動作は5秒かけてゆっくり下ろす
- 対象筋:広背筋上部
第2種目「アンダー×ナローグリップラットプルダウン」
- 重量:10レップスで限界になる重さ
- 回数:8~12レップス
- 注意点:ポジティブ1秒、ネガティブ2秒
- 対象筋:広背筋下部
第1種目は広背筋上部を筋肥大させるために、ストレッチ重視のトレーニングを行います。
広背筋を意識しつつ、ネガティブ動作をゆっくりにすることで大きな物理的ストレスを筋肉に与えることができます。
難易度が高いので、5レップスできない人は、限界までやった後に、ジャンプしてポジティブ動作を飛ばし、ネガティブ動作だけを5秒かけてやりましょう。
また5レップス以上できる場合は加重ベルトを使って加重懸垂を行って下さい。
第2種目は広背筋下部を狙ったトレーニングです。
アンダー×ナローグリップということもあり、上腕二頭筋への負荷が大きくなりやすいです。そこで1種目目のようなストレッチ重視ではなく、テンポよく反復運動を繰り返していきましょう。
この種目でも広背筋上部に刺激はいくので、広背筋上部の追い込みという意味も持っています。
まとめ-ラットプルダウンvs懸垂-
ラットプルダウンと懸垂の違いとグリップ方法について詳しく解説してきました。これまで説明してきた内容をまとめると次のようになります。
まとめ
- 筋肥大効果は「懸垂>ラットプルダウン」
- 広背筋の追い込みとしてラットプルダウンは有効
- オーバー×ワイドは広背筋上部向き
- アンダー×ナローは広背筋下部向き
- 背中トレ全般でサムレスグリップが効果的
正面からも見えるくらい大きな背中を目指して頑張りましょう!
それではまた!
自宅で懸垂ができれば高頻度で鍛えることができます。背中を早く大きくしたいって方は「どこでもマッチョPRO」を取り入れてみて下さい。
高頻度トレで筋肉が増えるメカニズムについては下記記事を参考にして下さい。
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毎日同じ部位を筋トレして筋肥大させる方法【筋核オーバートレーニング】
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