同じ部位の筋トレを行う時は48~72時間あけなければいけないという掟をやぶるトレーニング方法が最近は提唱されています。
その名も「筋核オーバートレーニング」
今までの筋トレとは一線を画すトレーニング方法で、なんと毎日同じ部位を鍛えるというものです。
陸上の短距離選手は毎日走っていますが、脚の筋肉がものすごく発達しています。
これと同じように水泳選手は背中、野球のピッチャーは肩とスポーツ選手は同じ部位のトレーニングを毎日行っているにも関わらず筋肥大できています。
筋トレの今までの概念からいうと、これらは完全にオーバートレーニングで筋肉の発達は見込めません。
しかし実際はそうなっていません。この理由が筋核オーバートレーニングに隠されているのです。
この記事では毎日筋トレをすることにより筋肥大が起きる理由と効果的なメニューについて説明していきます。
この記事を読むと分かること
- 筋核オーバートレーニングとは何か
- 筋核を増やすメリット
- 筋核オーバートレーニングのやり方
- ステロイドを使った後に使用を中断しても筋肉は増える?
目次
筋核とは
筋核とは「筋細胞中に存在する核」のことを指します。
筋細胞を構成するタンパク質は筋核の中にあるDNAから作られるので、筋肥大したいトレーニーにとって大事な存在です。
しかし筋核が作れるタンパク質の量は限界があるため、一つの筋核だけで筋肉を大きくするのは難しいです。
理科の授業で習ったかもしれませんが、一般的な細胞は一つの細胞につき一つの核しか持っていません。
しかし筋細胞は特殊で一つの細胞内にいくつもの核をもつことができます。
(画像引用元:http://buzzscience.net/archives/2690)
様々な研究で、筋細胞は鍛えられたときに周りに存在する細胞と融合し核の数を増やすことが分かっています。
つまりトレーニングによって、筋核を増やしていけば、それだけタンパク質が作られる量が増え、早く筋肉を大きくすることができるのです。
もっといえば、筋核をたくさん持っている人の方がタンパク質合成が盛んになるので、「筋核をたくさん持っている=筋肥大しやすい」ともいえます。
筋核オーバートレーニングの効果
筋核が筋肥大にもたらす効果が分かったところで、この筋核を増やすトレーニング「筋核オーバートレーニング」の効果について解説していきます。
筋核オーバートレーニングの効果
- 筋核を増やすことができる
- 筋核が増えた部位は筋肉が増えやすくなる
- 筋肉が増えやすくなる効果は15年近く続く
筋核オーバートレーニングを行うと、まず筋核が増えます。
そして筋核が増えることで、通常のトレーニングをして得られる筋肉量が増加します。
驚くべきことに、筋核が一度増えるとトレーニングをやめて15年がたっても維持できるとの報告があります。
筋核増やせば増やすほど、短期間で筋肉を増やすことができますし、筋トレをやめてしまってもすぐに元通りにすることができるのです。
筋核オーバートレーニングの研究例
筋核オーバートレーニングは最近になって分かってきたことなので、まだまだ未解明な点が多いです。
ここではマウスを対象に行った研究結果をご紹介します。[1]
まずは筋肥大と筋核増加の関係について調べた以下のグラフを見ていきましょう。
このグラフから、筋肥大が起こる数日前から筋核の数が増えていることが確認できます。
これはトレーニングを行うことで筋核が増え、増えた筋核が筋タンパクを作り出すことで筋肉が大きくなったことを示しています。
繰り返しになりますが、筋核を増やすことは筋肥大においてとても重要なのです。
続いてはトレーニングをして筋核を増やした後に、トレーニングをやめるとどうなるのか見ていきましょう。
下のグラフはトレーニングをさせた後に、除神経により運動しなくなったマウスの筋核と筋肉量を調べた結果です。
まずはトレーニングに伴って筋核と筋肉量が増加しています。そして除神経後は運動ができないので筋肉量が減っています。
しかし筋核の数はほとんど変化していません。
筋トレをやめても筋核の数は一定期間維持でき、筋トレを再開すれば筋肉量が増えやすいことを表しています。
筋核オーバートレーニングのやり方
筋核オーバートレーニングは軽めの重量で毎日トレーニングするトレーニング法です。
筋核を増やすのに最適なトレーニング法は次のようになります。
筋核オーバートレーニングの方法
- 重量設定:MAXの50~70%
- レップ数:10~12回
- セット数:3セット
- 種目数:1~2種目
- 頻度:毎日(最低でも週に5日)、1ヶ月継続したら1週間休息を入れる
- 普段のトレーニングの最後に取り入れる
筋核オーバートレーニングは毎日行うことが前提のトレーニングなので、普通のトレーニングと違って追い込む必要は有りません。
逆に追い込んでしまうと、翌日にトレーニングできなかったり、ケガのリスクが上がってしまうので気をつけましょう。
筋核オーバートレーニング中も通常のトレーニングは継続して行います。
しかし身体への負荷が大きくなるため、ターゲット部位は一つに絞りましょう。
大胸筋を強化したいのであれば、全身を鍛えるトレーニングプログラム(大胸筋を除く)に加えて、インクラインダンベルプレスとダンベルフライを毎日行います。
できるだけ毎日行うのが筋核を増やすポイントですが、最低週5日トレーニングを行えば筋核を増やすことはできるでしょう。
体への負担を軽減するために1ヶ月トレーニングを続けたら、1週間のオフ期間を設けるのをお忘れなく!
筋核オーバートレーニングのデメリット
一度行ってしまえば、その後は普通のトレーニングに戻しても筋肥大促進効果が続く「筋核オーバートレーニング」ですが、もちろんデメリットもあります。
特にケガのリスクには注意してトレーニングするようにして下さい。
筋核オーバートレーニングのデメリット
- ケガのリスクが高い(関節・腱・靭帯)
- 他の部位に影響する
- 継続するのが困難
- やりすぎるとオーバートレーニングになる
ケガのリスクが高い
筋核オーバートレーニングは毎日行うので、関節の疲労が抜けにくいです。
関節はもともと筋肉よりも回復速度が遅いので、筋肉痛が治ったからといって無理にトレーニングを行うと痛めてしまいます。
関節への負担を減らすために、なるべくアイソレート種目(単関節種目)を選びましょう。
コンパウンド種目ばかりを行ってしまうと、他のトレーニングで鍛える部位と重なってしまい、オーバートレーニングのリスクが増えます。
例えば大胸筋の筋核オーバートレーニングでベンチプレスを毎日行ってしまうと、ショルダープレスやスカルクラッシャーなど肩や三頭筋でも肘を使うので、疲労が溜まっていくばかりです。
これを防ぐために、大胸筋の種目は単関節種目のフライ系に変更しましょう。
他の部位に影響する
特定の部位を毎日鍛えると、他の部位に悪影響をもたらす可能性があります。
背中と大胸筋は拮抗筋同士なので、どちらかが疲労しているともう片方のトレーニングでも全力を出すことができません。
他にも大胸筋や背中で補助的に使用される腕や肩も疲労してしまうことで、腕・肩の単体のトレーニングで全力を出すことができず筋肥大が阻害される可能性があります。
これを防ぐために、トレーニングで追い込みすぎないことと疲労回復方法を徹底しましょう。
(余談)ステロイドをやめても筋肥大効果は続く
テストステロンレベルを上げることで、筋肉量を大幅に増やすことができる禁止薬物「アナボリックステロイド」は筋核を大幅に増やすことが明らかになっています。
スポーツ全般(ボディビルやフィジークなどの競技でも)でステロイドの使用が発覚すると、一定期間大会出場停止になります。
しかしステロイドによって増えた筋核は永続的に残るため、完全にナチュラルの選手とは比べ物にならないほど多くの筋肉を手に入れることができます。
同様にステロイドを摂取した後、非摂取期間を経て大会にでることもできてしまいます。
ステロイドはそもそも禁止薬物ですし、健康上の問題が数多くあるので、絶対に手をださないように気をつけて下さい。
▽ナチュラルで得られる最大筋量はこちらの記事で計算してみましょう。
筋トレで手に入る筋肉量には限界がある!簡単な計算で自分を分析してみよう
毎日トレーニングして筋核を増やそう
筋核オーバートレーニングはまだまだ未解明な部分も多いですが、筋核を増やすことで得られるメリットを非常に大きいので、筋トレで停滞を感じていたり、弱点部位がはっきりしてきた中~上級者には是非おすすめしたいトレーニング法です。
今回説明した内容を簡単にまとめましたので、もう一度整理してみて下さい。
まとめ
- 筋核を増やすには「50~70%×10回×3セット×2種目」を毎日行う
- 筋核を増やすと筋肉の合成量が増える
- 筋核は永続的に残るので、筋核オーバートレーニングをすれば筋肥大促進効果がずっと続く
筋核オーバートレーニングであなたの筋肉をさらに強化しましょう。
それではまた!
トレーニング後の疲労回復にはグルタミンが効果抜群です。筋核オーバートレーニング中は必ず摂取しておきたいサプリになります。
▽高頻度でトレーニングするにはホームジムが最適です。簡易的なホームジムなら費用も場所も最小限で済みます。
-
ホームジムのメリット・デメリットとは?費用や器具の選び方も詳しく解説
続きを見る
参考文献
[1]Myonuclei acquired by overload exercise precede hypertrophy and are not lost on detraining