私が筋トレを始めた時、ジムのトレーナーさんに、1SET・10レップスを合計3SET行うのがいいと教えられました。
1種目につき3セット行うやり方は日本では定番のトレーニング方法です。
でも本当に筋肥大に効果的なのは3セットなのでしょうか。
もっと少ない1セットでは物足りない?もっと多い5セットではオーバートレーニングになってしまう?
実は筋肥大に有効なセット数についても既に数多く研究されてきています。
この記事ではその研究を紹介しながら、理論上最適なセット数を考えていきたいと思います。
この記事を読むと分かること
- 筋肥大に最適なセット数
- 筋力アップに最適なセット数
セット数の考え方
筋トレで何セットが筋肥大に有効なのかは、個人個人のトレーニング方法によって変わってきます。
特にセットごとに追い込むかどうかで大きく考え方が変わります。
1セットでは不十分な理由
そもそも筋トレって何セットもやらないと筋肥大しないのでしょうか。
1970年代のアメリカでは、1セットだけで十分筋肥大するという売り込みのマシンが爆発的に売れて、筋トレ業界に革新が起きました。
でも現在は1セットだけで鍛え終わるなんて夢のマシンは存在しません。
結局のところ、複数セットで鍛える方法には筋肥大速度で勝つことができなかったのです。
1セットだけでは筋肥大に不十分だと言われる一番の理由は、私たち人間は死の危険を感じない限り最大の力を出すことができないからです。
これを心理的限界と呼びます。
われわれが普段どれだけ力を振り絞っても本来持つ力を全て発揮することはできません。よく火事場の馬鹿力と言われるのはこの心理的限界によるリミットが解除されて本来の力が発揮できるからです。
筋トレで大事なのは各部位すべての筋繊維を疲労させることです。
仮に心理的限界で本来もつ力の80%しかトレーニングで発揮できないとします。筋繊維は働くか、働かないかの二択しかないので、MAXの80%の重量で限界までトレーニングしても、全体の64%(80%×80%)の筋繊維しか働かず、残りの36%は休憩していることになります。
つまり1セット行っただけでは、6割の筋肉にしかストレスを与えていないことになるのです。
限界まで追い込めば2セットで十分
続いて2セット目を行うと、休んでいた36%の筋繊維と既に疲れている筋繊維が頑張って力を発揮します。
しかし元気な筋繊維は36%しかないので、1セット目ほど重量や回数をこなすことができません。
ですが、2セット目も限界まで追い込むことで、休んでいた36%の筋繊維も疲労させることができ、100%筋繊維を疲労させることができました。
このように「2セット限界まで追い込む」ことで、全ての筋繊維を疲労させることができるため、十分な筋肥大効果を得ることができます。
限界まで追い込まない場合は4セット
セットごとに限界まで追い込むことで2セットで全ての筋繊維を疲労させられることは分かりました。
では毎回限界まで行わない場合はどうでしょうか。
例えばパワーリフティングの選手が愛用する5×5法は限界まで追い込まず5レップス終えたところでインターバルを挟みます。
この5×5法は扱う重量はおおよそMAXの70%なので、本来であれば10レップス以上できるトレーニングです。しかし実際には5レップスしか行っていないので、1セットでは疲労困憊状態になりません。すべての筋繊維が疲労困憊になるためには2回ずつ働かせる必要があるので、
5×5法はMAXの70%を扱うということで、本来の力からすると56%の力でトレーニングを行うことになります。
全筋繊維を2回ずつ働かせるには計200%にならなければいけないので、200/56=4セット必要です。
扱う重量によっても多少前後しますが、限界まで追い込まないでトレーニングする場合は、4セット行うことで十分な筋肥大効果を得ることができます。
目的別セット数まとめ
限界まで追い込む場合は2セット、追い込まない場合は4セットで筋肉を疲れさせることができるとわかりました。
筋力は伸ばすためには、神経系の発達が必要になるため、セット数を数多くこなす必要があります。
それゆえにパワーリフティングのトレーニングプログラムはセット数が多めで、各セットで追い込まないことが基本になります。
セット数が増えるとどうしてもトレーニング時間が長くなります。長時間のトレーニングになると、ストレスホルモン(=コルチゾール)の分泌が増えて、筋肥大を阻害してしまいます。
単純に筋肥大だけ考えると、短時間でトレーニングを終えた方がいいので、毎セット限界まで追い込む方が効率が良いです。
筋力を伸ばしたいのか、筋肉を増やしたいのか、目的に応じてセット数とレップ数を変えると良いでしょう。
最適セット数
- 筋肥大重視:各セット限界まで追い込んで計2セット
- 筋力アップ重視:各セット限界まで追い込まないで計4セット
最近の研究結果
ここまでは少し理論的に考えてきましたが、次は実際にどうなのかエビデンスを元にご説明します。
研究内容
- 対象:14名のトレーニング経験がある男性(39.7±6.7歳)
- 種目:ベンチプレス、レッグカール、レッグエクステンション、アームカール、ショルダープレス
- 期間:13週間
- 1セットグループ:8~12レップスを扱える重量で限界まで追い込む
- 3セットグループ:8~12レップスを扱える重量で限界まで追い込む
今回ご紹介する文献は、トレーニング経験が豊富な人を対象に行った研究です。(参考文献)
この研究は、各種目1セットしかやらないグループと3セットやるグループに分けて、13週間後に筋肉量と筋力を測定しています。
それでは結果を見ていきましょう。まずは13週間後に測定した筋力の比較です。
LEEX-1がレッグエクステンションの1セットグループで、LEEX-3は3セット行ったグループです。
同様にCPEX-1、3はチェストプレスのMAX重量です。
両グループともに明らかにMAX重量が伸びていました。しかし二つのグループ間に有意な差は見られませんでした。
続いて、レッグカール、ショルダープレス(オーバーヘッドプレス)、アームカールのMAX重量を見ていきます。
こちらも両グループともにMAX重量が伸びていますが、グループ間に有意な差は見られませんでした。
では筋持久力はどうでしょうか。続いてはトレーニングプログラムを開始する前(研究前)のMAX重量の75%で何レップスできるかを試した結果です。
両グループともに大幅にレップス数が増加していますが、MAX重量と同じようにグループ間に有意な差はありませんでした。
そして筋肉量の変化を表す除脂肪体重の変化量もグループ間で差が見られなかったと結論付けています。
つまり筋力・筋持久力・筋肥大すべての面で1セットも3セットも同じ効果だったことになります。
この研究からいえば、筋トレは1セットで十分で多セットやる必要はないということになります。
このほかにも1セットで十分だとする文献は数多くあります。2017年になって出たレビュー文献ではトレーニング初心者が3セット以上トレーニングすることが2セット以下の時よりも筋肥大に有効だとは言えないとしています。
研究から明らかになったこと
- トレーニング経験者は1セットも3セットも筋力・筋肥大・筋持久力に与える効果は同じ
- トレーニング未経験者でも多セットが有効とは言えない
結論:2セット行えば十分
先ほど説明した理論的なことと実際の研究で明らかになったことを合わせて考えると、1セットごとに限界まで追い込む場合は何セットも行う必要はなく、2セット行えば十分筋肥大効果が得られるでしょう。
2セットだけと決めたら、トレーニング時間が大幅に短縮されると思うので、その分部位を細かく分けてトレーニングしてもいいですし、早めにトレーニングを引き上げて回復するのも筋肥大に有効です。
ただこの2セットにはウォーミングアップは含まれていないので、少なくともその日の最初の種目はウォーミングアップで2セット+本番2セットの計4セット行うと良いでしょう。
しっかりウォーミングアップを行い、ケガのないようにトレーニングして下さい。
最適セット数のまとめ
- セットごとに追い込む場合は2セットで十分
- 各部位最初の種目はウォーミングアップ2セット+本番2セット行う
- 筋力アップを狙う場合は毎回追い込まずに4セットやるのも効果的
それでは良いトレーニングを!
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