ライザップによって日本中に広まった「糖質制限ダイエット」
その人気は未だに根強く、ダイエットの定番にもなりつつあります。
健康的かつ確実にやせられる方法は「適切な食事制限」と「運動」しかありません。
ですが、運動と適切な食事制限ができない人に注目してもらうために突飛なダイエット方法が開発されて世に出てくるのです。
つまり何か新しいダイエット方法、しかも「簡単に痩せられる!」なんて怪しいダイエット法には注意が必要です。
この記事では糖質制限ダイエットのリスクに関する部分を詳しく説明していこうと思います。
この記事を読むと分かること
- 糖新生とはなにか
- 糖質制限でやせるメカニズム
- 糖質制限のリスク
- 結論=糖質制限はおすすめしない
目次
糖新生とは
質制限ダイエットのメカニズムを考える上で「糖新生」という現象をさけて通れません。
なるべく簡単に分かりやすく説明するので、具体的なイメージをもっていただければと思います。
糖新生とは、体内から糖質が不足した時に、体内で糖を新しく作ることです。
厚生労働省が出している「日本人の食事摂取基準」によると、糖質は必要エネルギーの50~65%の範囲で摂取することを推奨しています。
でも体調を崩してしまった時なんかは、食事を十分にとれないので、糖質不足に陥ってしまいます。
人間のエネルギー源は糖質なので(特に赤血球は糖質だけがエネルギー源)、糖質が不足する=死の危険になってしまいます。
これを防ぐために、糖新生があります。糖新生は糖が不足しても大丈夫な仕組みともいえるでしょう。
糖新生では、アミノ酸・乳酸・グリセロール(中性脂肪)を材料にしてブドウ糖を作り出します。
糖質制限ダイエットのメカニズム
糖質制限ダイエットは糖質を制限し体を糖質不足にして、糖新生を起こすことで、脂肪をエネルギーに変えようとするダイエットです。
糖質をひかえる
↓
体内の糖質が不足する
↓
糖新生が起こる
↓
脂肪がエネルギーに変わって痩せる
さらに糖質制限の優れているところは、非常にエネルギーを消耗する行為だという点です。
体内に糖質が十分ある時は、解糖系(糖を使ってエネルギーをつくる経路)によって、1つのブドウ糖から2つのATP(エネルギー)を生み出します。
でも糖新生の場合は、アミノ酸のアラニンを例に挙げると、1つのブドウ糖をつくるのに8つのATPが必要になります。そしてその後に解糖系によって1つのブドウ糖から2つのATPができます。
糖新生の場合は、8つのATPを消費して、2つのATPを得るので、結果マイナス6個のATPが消費されることになります。
ATPがなくなればなくなるほど、エネルギーを使ったことになるため、糖新生は非常に効率よくエネルギーを消耗する手段と言うことです。
ポイント
- 糖質制限をすると脂肪がブドウ糖に変わってエネルギー源となる
- ブドウ糖をつくる過程でエネルギーを消費するからダイエット効果が高い
糖質制限のリスク
ダイエット効果が高くて万能にも思える糖質制限ですが、いくつのリスクが有ります。
糖質制限のリスク
- 筋肉が落ちてリバウンドしやすい
- 耐糖能が落ちてリバウンドしやすい
- 血管系の病気になりやすい
- 体重減少の多くは水分が抜けているだけ
筋肉が落ちてリバウンドしやすい
人間が糖質不足に陥った時に、エネルギー源となるブドウ糖が貯蔵されているのは「肝臓」「筋肉」「脂肪」の3つです。
このブドウ糖が貯蔵されている中でもっともエネルギーに変わりやすいのが肝臓で、2番目が筋肉です。
そしてもっともエネルギーに変わりにくいのが脂肪です。
つまり普通にダイエットしてしまうと、脂肪よりも筋肉が優先的に分解されて糖新生を起こしてしまうのです。
筋肉が落ちてしまうと代謝が落ちリバウンドしやすい身体になってしまいます。
ダイエットの目的は一体なんでしょうか?
「細くてきれいな体になりたい」
「だらしない体をなんとかしたい」
人によって目的は少しずつ違うかもしれませんが、共通してかっこいい・綺麗な体になりたいという思いはもっているのではないでしょうか。
糖質制限ダイエットは筋肉を落としてしまうので、リバウンドしやすいだけでなく、たるんだだらしない体にもなってしまいがちです。
ダイエットの目的は体重を落とすことではなく、体脂肪を落とすことです。
この目的だけは絶対に忘れないでください。
ポイント
- 肝臓 > 筋肉 > 脂肪の順番でブドウ糖に変わりやすい
- 糖質制限すると、脂肪だけでなく筋肉も分解されてしまう
耐糖能が落ちてリバウンドしやすい
糖質制限ダイエット後のリバウンド報告は非常に多いですが、これは筋肉量の低下だけでなく、「耐糖能の低下」も関係しています。
耐糖能とはブドウ糖を処理する能力のことです。
糖質を摂取すると血糖値が上がるため、これを下げようとインスリンが分泌されます。インスリンが正常に分泌されて血糖値が下がるかどうかを示す指標が耐糖能になります。
糖質を長い期間、制限しているとインスリンの分泌能力が衰えてしまいます。
糖質制限を終了して、いつも通りに糖質を摂取すると血液中の糖分が処理されず、体脂肪にまわってしまうため、リバウンドが起きてしまいます。
ポイント
- 糖質制限で耐糖能が低下してしまう
- ダイエット終了後に糖質をとると耐糖能が低下しているので、糖質を処理できず体脂肪になりやすくなる
血管系の病気になりやすい
糖質制限を行うとやってしまいがちなのが、脂肪を含む食品をたくさん食べることです。
糖質制限とパッケージにかかれた商品の多くは脂肪が大量に含まれていますし、肉をたくさん食べることでもタンパク質と同時に多量の脂肪を摂取してしまいます。
糖質制限の場合、糖質を減らす代わりに脂質を増やすのは間違いではなく正しいことです。
しかし注意しなければいけないのは脂質の種類です。
脂質は大きく分けて「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類があります。
飽和脂肪酸は牛や豚といった動物性の脂肪に多く含まれています。牛や豚は体温が高いので液状ですが、人は体温が低いため体内でかたまりやすく血液をドロドロにしてしまいます。
それ故に飽和脂肪酸の過剰摂取は、動脈硬化をはじめとした血液の病気をもたらします。
また外食やコンビニのご飯に多く含まれているのが植物油脂です。植物油は不飽和脂肪酸なので、悪玉コレステロールを増やすことはありませんが、植物油脂は植物油に水素を添加することで、飽和脂肪酸に変換されています。
さらにこの変換過程でトランス脂肪酸が発生します。トランス脂肪酸は、心臓発作や脳卒中の原因となる動脈硬化や血漿脂肪、悪玉コレステロールを増加させることが分かっており、米国食品医薬品局は「一般的に安全だとは、もはや認識できない(No Longer Generally Recognized as Safe)」と声明をだしています。
ポイント
- 糖質制限は糖質を抑える代わりに脂質を多く摂取しなければいけない
- 脂質をとる時は飽和脂肪酸と植物油脂をなるべく避ける
体重減少の多くは水分が抜けているだけ
これは糖質制限のリスクというか事実の部分です。
糖質制限をすると毎日毎日体重が減って快感を覚えると思います。
この体重減少のほとんどは「水分」と「ブドウ糖(グリコーゲン)」の減少によるものです。
糖質制限のダイエット効果が高いことは前にお話ししましたが、それでも毎日毎日変化するほどではありません。
糖質制限を行うと、体中のありとあらゆる糖質をエネルギーに変えます。
体の中でも糖質であるグリコーゲンの蓄積量が多いのは筋肉です。体重が60kgの人は筋肉の中に約300gほどグリコーゲンが貯蔵されています。
また肝臓にも80g程度貯蔵されているので、合わせて400gくらいは体内にグリコーゲンがあることになります。
そしてグリコーゲンは1gにつき、3gの水とくっつきます。
つまり体内にあるグリコーゲン400gには、1200gの水がくっついています。
糖質制限を行うと、一気にグリコーゲンがなくなるので、水と合わせて1600gも体からなくなることになります。
これが糖質制限を開始して一気に体重が落ちる要因です。
また体内の水分量がへるので、体が細くなって見えるのも糖質制限が効果があると言われる原因の一つです。
あたりまえですが、糖質制限をやめた途端に1.5kg近く体重が増えます。何も知らないで1.5kgも増えるとびっくりしちゃいますよね。
ポイント
- 糖質制限初期の体重減少のほとんどは水分とグリコーゲンの減少
結論:糖質制限はおすすめしない
糖質制限は上手に使えば、高いダイエット効果があります。
特に気をつけたいのが中途半端な糖質制限ダイエットです。糖質を一切たちきる「ケトジェニック」であれば、体がケトン体になるので、今回お話ししたリスクはなくなります。
しかしケトジェニックダイエットは少々難しいというデメリットがあります。
世間をにぎわせている糖質制限は「中途半端な糖質制限」です。夕食だけご飯を抜く、糖質が少しだけ入った物は食べてOK、脂はなんでもOK、これでは健康を害する危険性があったり、リバウンドしやすくなるだけです。
流行り廃りの激しいダイエット業界では、だれしもがとっつきやすい簡単に実践できる方法を流行らせようとします。
ですが、いつの時代もダイエットの基本は「適度な食事制限」と「運動」です。
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