サプリメントとしてはまだまだマイナーな存在の「ベータアラニン」
ベータアラニンは筋トレをする人やダイエットを頑張る人にとって、非常に心強い味方になってくれるアミノ酸です。
あまり聞きなれないサプリメントかもしれませんが、海外では広く使用されているサプリメントで、スポーツのパフォーマンス向上にも一役買ってくれます。
この記事ではベータアラニンの効果と摂取方法について詳しく解説していこうと思います。
この記事を読むと分かること
- ベータアラニンとカルノシンの関係
- ベータアラニンの効果
- ベータアラニンの副作用
- ベータアラニンの効果的な摂取方法
目次
ベータアラニンとは
ベータアラニン(β‐アラニン)は天然に存在するアミノ酸の一種で、体内で遊離アミノ酸として存在したり、カルノシンを構成する分子になったりしています。
ベータアラニンとヒスチジンが結合することでできるペプチドが「カルノシン」になります。
カルノシンは筋トレやスポーツにとって非常に重要な役割を果たします。
つまりベータアラニンは、ベータアラニンそのものに効果があるというよりも、体内でカルノシンを合成することで、効果を発揮するのです。
ちなみにヒスチジンは体内に豊富に存在するため、サプリメントとして摂取するのはベータアラニンだけで十分です。
カルノシンの効果
筋トレで重いダンベルやバーベルを持ち上げようとするとき、脳から筋肉を収縮させるように指令がでます。
この指令は神経を伝わって筋肉に届き、筋膜にある小胞体からカルシウムイオンが放出します。
そして細い筋糸の構成タンパクの一種である「トロポニン」にカルシウムが結合することで、細い筋糸が太い筋糸に沿って滑走し、太い筋糸の間に入り込むようにして筋糸が短くなります。
この反応がたくさんの筋糸で起こることで筋繊維全体が収縮します。
このようにカルシウムイオンが放出されることで筋肉は収縮できるのです。
しかしトレーニングを続けていると、エネルギーを作り出す工程で発生する水素が筋肉中にたまり、筋肉のpHが酸性に傾いてしまいます。
この酸性化によって疲労を感じると、カルシウムイオンの放出が抑えられ、十分に筋肉が収縮できなくなってしまいます。
カルノシンは水素の発生を抑制し、カルシウムイオンの放出をうながす作用をもっているため、長時間のトレーニングでも筋力が衰えにくくなります。
その結果、トレーニングボリュームが増え、筋肥大につながります。
ベータアラニンとカルノシンの関係【整理】
ベータアラニンは、体内にたくさん存在するヒスチジンと結合することで「カルノシン」を生成します。
そしてベータアラニンから生成されたカルノシンがカルシウムイオンの放出を促すことで、筋疲労が抑制されて、筋トレのパフォーマンス向上につながります。
ベータアラニンとカルノシン
- 「ベータアラニン+ヒスチジン」→「カルノシン」
- ベータアラニンを摂取すると血中カルノシン濃度が高くなる
- カルノシンはカルシウムイオンの放出を促し、筋力を維持する
ベータアラニンの効果【科学的根拠】
ベータアラニンに関する研究は広く行われており、筋トレに限らず、ランニングや自転車競技といった有酸素運動に関する報告もあります。
ここでは筋トレと有酸素運動の中間である「HIIT」を対象にして行われた研究を紹介します。[1]
HIITは短時間のインターバルをはさみながら、高強度の運動を繰り返して行うトレーニング方法です。
例えば腕立て伏せを10回行って、10秒休んで、また10回・・・(以降繰り返し)などがHIITになります。
無酸素運動を短時間インターバルで行うので、筋トレでありながら心肺機能を鍛えることができ、また脂肪燃焼効果も高いトレーニングです。
▽HIITについてこちらの記事を参考にしてください。
1日5分以下でできる唯一のダイエット運動!まだ有酸素運動してるの?
研究内容
- 対象者:平均年齢22歳の男性46名
- 期間:42日
- 内容:「プラセボ」と「βアラニン」の2グループに分けて、HIITを実施
- 摂取方法:前半21日間は6g/日、後半21日間は3g/日
トレーニングパフォーマンスの向上
まずはトレーニングで消費したエネルギー量についてみていきましょう。
試験前は「βアラニン」と「プラセボ」ともにトレーニング量に差はありませんでしたが、次第に差が大きくなっていることが分かります。
最終的に、ベータアラニンを摂取した群がプラセボに対して、23%もトレーニング量が増える結果になりました。
ベータアラニンを摂取することで、疲労を感じにくくなり、長時間のトレーニングが可能になったと考えられます。
この結果を見ると、試験中盤~後半にかけて大きくパフォーマンスが向上していることが分かると思います。
ベータアラニンを継続摂取すると、カルノシンは体内に蓄積されていき、約2週間後に、ローディングが完了するといわれています。
この研究では試験中盤にようやくローディングが完了しているので、試験前~試験中盤よりも、試験中盤~試験後半の方がよりカルノシン効果を発揮できたからだと考えられます。
筋肉量の増加
続いて除脂肪体重の変化を見ていきましょう。
除脂肪体重は、体重から体脂肪量を引いたものになります。
内臓や骨の重さはほとんど変化しないと考えられるので、「除脂肪体重の変化」=「筋肉量の変化」とみていいでしょう。
βアラニン | プラセボ | |||||
試験前 | 試験中 | 試験後 | 試験前 | 試験中 | 試験後 | |
体重[kg] | 78.8 | 80.1 | 79.8 | 78.5 | 79.3 | 79.8 |
体脂肪率[%] | 13.7 | 13.7 | 13.7 | 16.1 | 15.9 | 16.0 |
除脂肪体重[kg] | 67.6 | 68.6 | 68.4(+0.8) | 65.5 | 66.1 | 65.8(+0.3) |
体脂肪量[kg] | 11.3 | 11.5 | 11.3 | 13.0 | 13.1 | 13.0 |
(表は被験者の平均値を記載)
表を見ていただくとわかる通り、βアラニンを摂取した群は800gも除脂肪体重が増えているのに対し、プラセボは300gにとどまっています。
この差である500gがベータアラニンの効果になります。
ベータアラニンはトレーニングパフォーマンスを向上させることで、筋肉に大きな刺激を与えることができます。
その結果、ベータアラニンを摂取した被験者は、筋肥大が促進したと考えられます。
筋力を向上する
ほかにもカルノシン濃度とパワーを調査した研究結果を紹介します。[2]
これは11人の健康な男性を対象に、筋肉中のカルノシン濃度と運動パフォーマンスの関係を調査した研究です。
体重の7.5%の負荷をかけて、30秒間全力ペダリングをした時のパワーを測定しています。
筋トレとは少し異なる力の出し方ですが無酸素運動・瞬発力が求められる動作なので、筋トレでも同じような結果が出ると想定されます。
結果がこちらのグラフです。
筋肉中のカルノシン濃度が増えるほど、平均パワーが高くなっていることが分かります。
これはカルノシンが筋収縮力を向上させているからだと考えられます。
ベータアラニンを継続摂取することで、筋肉中にカルノシンをローディングできるため、筋力向上も期待することができます。
ベータアラニンの効果まとめ
ベータアラニンを継続摂取することで、下記効果を期待することができます。
ベータアラニンの効果
- トレーニングパフォーマンスの向上
- 筋肥大促進
- 筋力向上
- 体脂肪の減少
ベータアラニンの副作用
ベータアラニンは体内で生産されているアミノ酸なので、外部から摂取しても有害性はありません。
国際スポーツ栄養学会のレビューでも有害性が否定されています。
ひとつ注意してほしいのが、ベータアラニン特有の「チクチク感」です。
ベータアラニンを初めて摂取する方は、顔・首・手など全身もしくは体の一部にチクチク・ピリピリ感が生じる場合があります。
通常は継続的に摂取していくことで徐々に感じなくなってきます。
ベータアラニンの副作用
- 有害性はない
- 摂取初期はチクチク・ピリピリする場合がある、継続摂取すると症状は和らぐ
ベータアラニンの摂取方法
ベータアラニンによる効果を最大限発揮するためには、継続摂取が必要になります。
最初に紹介した研究のように、「ローディング期間」を設けて、その後は「維持期」とするのが理想的です。
ベータアラニンの摂取方法
- ローディング期間(2週間)
- 一回あたりの摂取量:1.5g
- 摂取回数:4回
- 一日の摂取量:6g
- 維持期間(ローディング後毎日)
- 一回あたりの摂取量:1.5g
- 摂取回数:2回
- 一日の摂取量:3g
一度に大量に摂取しても、排出される割合が増えてしまうだけなので、なるべくこまめに摂取することが大切です。
一回あたり1.5gでローディング期間中は一日4回、維持期間中は一日2回摂取しましょう。
クレアチンと同様にしばらく摂取しない期間ができてしまうと、ローディングした分が排出されてしまうので、なるべく継続摂取を心がけてください。
ベータアラニンで筋トレのパフォーマンスを上げよう
ベータアラニンは数あるサプリメントの中でも科学的に効果があると支持されている優良サプリメントです。
継続摂取しなければいけないので、少しハードルが高いですが、私たち夫婦も効果を感じたサプリメントなので、幅広い人に効果があると思われます。
最後に今回お話したベータアラニンに関する内容を整理しましょう。
まとめ
- ベータアラニンの効果
- トレーニングパフォーマンスの向上
- 筋肥大促進
- 筋力向上
- 体脂肪の減少
- ベータアラニンの副作用
- 有害性はない
- 摂取初期はチクチク・ピリピリする場合がある、継続摂取すると症状は和らぐ
- 摂取方法(かっこ内はローディング)
- 一回あたりの摂取量:1.5g
- 摂取回数:2回(4回)
- 一日の摂取量:3g(6g)
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最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた!
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参考文献
[1]Effects of β-alanine supplementation and high-intensity interval training on endurance performance and body composition in men; a double-blind trial.
[2]High level of skeletal muscle carnosine contributes to the latter half of exercise performance during 30-s maximal cycle ergometer sprinting.