筋トレ好きがやってしまいがちな大きな失敗が「肉中心の食生活」です。
もちろんタンパク質を摂取するうえでは、お肉は必要なものですが、それに負けず劣らず大切なのは「食物繊維」です。
私の経験上、たくさんの野菜を食べても、高タンパクな食事をしている限りは、腸内環境が悪くなってしまいました。
野菜に含まれる食物繊維は実はかなり少なく、我々トレーニーに必要な食物繊維を摂取することは至難のわざです。
ですがその分、食物繊維がもたらしてくれる効果は素晴らしいものがあります。
この記事では食物繊維がトレーニーにもたらしてくれる効果について徹底的に解説していこうと思います。
また摂取するときの注意点についても説明するので、最後まで読んでいってください。
この記事を読むと分かること
- 食物繊維の種類
- 食物繊維が筋トレにもたらす効果
- 食物繊維の摂取方法
- プレバイオティクスとは何か
目次
食物繊維の種類
食物繊維は大きく2つに分けることができ、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」があります。
基本的にはどちらもバランスよく摂取した方がいいですが、不溶性食物繊維はとりすぎると良くないので、サプリメントから摂取する場合は水溶性を選ぶようにしましょう。
また水溶性と不溶性では、体内に入った時の効果が異なるので簡単に違いを見ていきましょう。
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維はその名の通り、水に溶ける性質を持っており、体の中に入ると水分と混ざってゲル状になります。このため食べ物の吸収速度を遅くする役割を持っています。
水溶性食物繊維が豊富な食べ物
- 果物
- 野菜
- 芋類
- 海藻類
不溶性食物繊維
水溶性とは異なり、水に溶けない性質を持った食物繊維を「不溶性食物繊維」と呼びます。
不溶性食物繊維は水に溶けにくいですが、水を取り込むことで大きく膨れ上がります。
これにより、満腹感を覚えたり、便秘を解消してくれます。
不溶性食物繊維をたくさんとりすぎると、必要な脂肪分やミネラルの吸収を阻害してしまうので、とりすぎに注意が必要です。
不溶性食物繊維が豊富な食べ物
- 野菜
- 豆類
- 穀類
食物繊維の効果
食物繊維は高タンパクな食事が中心になる筋トレと非常に相性がいいです。
ここでは食物繊維の効果を詳しく解説していきます。
食物繊維の効果
- 腸内環境の改善
- 栄養を吸収しやすくする
- 体脂肪を減らす
- 栄養が筋肉に行きやすい環境をつくる
食物繊維は腸内環境を整える
私たちの腸内には1,000種1,000兆個以上の腸内細菌が存在していると言われていますが、これらは大まかに3種類に分けることができます。
- 善玉菌:悪玉菌を減らし、お腹の調子を良くする
- 悪玉菌:腸内で有害物質をつくる
- 日和見菌:どちらか多い方の味方をする
この3つの腸内細菌は「日和見菌>善玉菌>悪玉菌」の順で多く存在しているのが理想です。
バランスよく存在している状態を腸内フローラが整っているとも言います。
タンパク質は悪玉菌のエサになるので、プロテインや高タンパクな食事を摂り続けていると腸内環境が悪化してしまいます。
腸内フローラが崩れてしまうと日和見菌も加勢して一気に悪玉菌が増殖します。
腸内フローラが崩れると、免疫力が低下し風邪をひきやすくなったり、せっかく食べた栄養素が吸収されにくくなったりします。
腸内フローラを正常な状態に戻すためには善玉菌を増やす必要があります。
このとき大活躍してくれるのが「食物繊維」です。
水溶性食物繊維は善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌などのエサになるので、善玉菌を増やし腸内フローラを整えてくれるのです。
体脂肪を減らす
食物繊維を食べると、腸内細菌によって酪酸などの短鎖脂肪酸が産生されます。
この短鎖脂肪酸が受容体である「GPR43」や「GPR41」を活性化します。
GPR43には体脂肪の増加を抑制し、肥満を防ぐ機能があります。
GPR41は交感神経を介して、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスを保つ機能があります。
ラットを使ってGPR43の効果を確かめた研究があります。[1]
研究内容
- 対象:GPR43を欠損させたマウス、GPR43を過剰発現させたマウス
- 結果:GPR43を欠損させたマウスは通常の餌で肥満になった。GPR43を過剰に発現させたマウスは高脂肪食を与えても痩せたままだった。
上記研究により、GPR43による肥満抑制が確認されました。
GPR43は筋肉や肝臓のインスリン感受性を高め、脂肪組織だけインスリン感受性を下げることがわかっています。
インスリン感受性高い場所ほど栄養素がたくさん送られます。
したがって筋肉や肝臓にたくさん栄養がいき、脂肪には栄養が行きにくくなります。
筋肉や肝臓はエネルギー消費が多いので、食事から摂取したカロリーを効率よく消費してくれます。
またGPR43と違って、交感神経を活性化することで脂肪をつきにくくしてくれるのがGPR41です。
GPR41の役割
- 食事により食物繊維を摂取
- 腸内細菌が食物繊維から酪酸を産生
- 酪酸がGPR41を活性化
- 交感神経が活性化して、エネルギー消費が増加
上記は摂取カロリーが過剰の場合。飢餓の場合はエネルギー消費を減らすように機能する。
このように食物繊維をしっかり摂取することで、エネルギー代謝が適正化されて、体脂肪が増えるのを防ぐことができるのです。
食物繊維は筋トレ効果を高めてくれる
筋トレをする人にとって食物繊維は非常に大切な栄養素なので積極的に摂取しましょう。
高タンパクな食事を続けているとどうしても腸内環境が悪化して、せっかく摂取したタンパク質が吸収できない体になってしまいます。
それを防ぐために食物繊維が有効になります。
またそれだけでなく、筋肉のインスリン感受性を増やして、筋肉に栄養をいきやすくしてくれたり、無駄な体脂肪がつきにくくしてくれます。
トレーニーに食物繊維が必須な4つの理由
- 高タンパクな食事を続けても腸内環境が悪化しなくなる
- 栄養素の吸収率を高めてくれる
- 筋肉に栄養が行きやすくなる
- 脂肪がつきにくくなる
食物繊維の摂取方法
食物繊維を野菜から摂取しようと思うと、かなり難しく、負担が大きくなってしまいます。
そこで食物繊維のサプリメントを上手に使いましょう。
食物繊維のサプリは安価で手に入りやすいうえ、飲み物に溶かして飲んでも味に変化がないので、美味しく続けることができます。
食物繊維は「難消化性デキストリン」として売られています。難消化デキストリンは植物から抽出した水溶性食物繊維のことを表しています。
食物繊維の摂取方法
- 一食あたり5gの難消化性デキストリンを摂取する
- 食事前または食事中のドリンクに難消化性デキストリンを溶かして飲む
- 就寝前はプロテインに溶かして飲む
- トレーニング後の食事では食物繊維は摂取しない
ここからは食物繊維の効果的な摂取方法についてみていきましょう。
いつもの食事に食物繊維をプラス
毎日の食事に食物繊維をプラスしましょう。
食事前や食事中に飲むドリンクに食物繊維サプリを溶かしておくことで、食事から摂取する脂肪や糖の吸収を穏やかにすることができます。
血糖値が安定しやすくなるので、満腹感が持続したり、痩せやすい体をつくることができます。
また高タンパクな食事を続けた結果生じてしまった「お腹や肌が乱れ」、「体臭がきつくなる」といった諸症状を改善することが期待できます。
一つ注意してほしいのが、トレーニング後の食事には食物繊維を入れないことです。
トレーニング後は筋肉内の糖質(=筋グリコーゲン)が枯渇しているため、筋分解が起こりやすい状態になっています。なるべく早く糖質を補給することが大切なので、トレーニング後は食物繊維の含まれない食事を摂取しましょう。
血糖値が上がることで分泌されるインスリンが筋肉の材料を全身に運ぶ役割を持っていることからも同じことが言えます。
「食物繊維+プロテイン」が就寝前に最適
プロテインにはたくさんの種類がありますが、最も親しまれているのが「ホエイプロテイン」です。
ホエイプロテインは吸収が速い分、筋肉を合成する力も強いです。
しかし就寝中は長時間絶食状態になるため、吸収が遅いプロテインの方が血中のアミノ酸濃度を一定に保つことができます。
普通はソイプロテインやカゼインプロテインなど吸収の遅いプロテインを寝る前に飲むことが推奨されます。
ホエイプロテインだけでやりくりしたいと思っている方におすすめなのが「食物繊維+ホエイプロテイン」です。
水溶性食物繊維は先程お話しした通り、食べ物の吸収をおだやかにする効果があります。
ホエイプロテインと食物繊維を組み合わせることで、吸収を遅らせ、寝ている間もタンパク質を切らす心配がなくなります。
プレバイオティクスとは?
プレバイオティクスは英国の微生物学者Gibsonによって1995年に提唱された用語で、次の4つの条件を満たしたものを指しています。
プレバイオティクスとは
- 消化管上部で分解・吸収されない
- 大腸に共生する有益な細菌の選択的な栄養源となり、それらの増殖を促進する
- 大腸の腸内フローラ構成を健康的なバランスに改善し維持する
- 人の健康の増進維持に役立つ
腸内にいる善玉菌のエサになって腸内環境を整えてくれるのが「プレバイオティクス」です。
腸内環境を整えるものとしてよく知られているのがビフィズス菌を含んだヨーグルトや乳酸菌サプリメントですが、これらは腸に到達する前に胃酸でやられてしまいます。こういったものはプレバイオティクスではありません。
基本的には「難消化性デキストリン」を摂取していればOKです。
食物繊維で筋肉をサポートしよう
筋トレというとタンパク質ばかりを考えてしまいがちです。
その結果、肉や魚ばかり食べている方を多く見ます。私の周りでも野菜はほとんど食べない人がたくさんいます。
でも食物繊維が不足していると知らず知らずのうちに筋肉が増えにくい体になっているかもしれませんよ。
今回お話した内容をもとにまずは「難消化性デキストリン」から食物繊維の摂取をはじめてみてください。
まとめ
- 食物繊維の効果
- 高タンパクな食事を続けても腸内環境が悪化しなくなる
- 栄養素の吸収率を高めてくれる
- 筋肉に栄養が行きやすくなる
- 脂肪がつきにくくなる
- 摂取方法
- 一食あたり5gの難消化性デキストリンを摂取する
- 食事前または食事中のドリンクに難消化性デキストリンを溶かして飲む
- 就寝前はプロテインに溶かして飲む
- トレーニング後の食事では食物繊維は摂取しない
余力がでてきたら、栄養バランスの整った食事を食べるようにしてください。
マッスルデリは私も愛用しており、高タンパクなうえに野菜も豊富で、なにより美味しいので、楽しくボディメイクを続けることができます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた!
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参考文献
[1]The gut microbiota suppresses insulin-mediated fat accumulation via the short-chain fatty acid receptor GPR43