一時期スロートレーニングと呼ばれる筋トレ方法が流行りました。
これは4秒かけてあげて、4秒かけて下ろす、ゆっくりとした動作が特徴的です。
でも現在ではスロートレーニングを実践する人はあまり見かけません。
これは単に流行が過ぎたからなのか、それとも効果が薄かったのでしょうか。
この疑問に答えるべく、今回は筋トレの最適な動作スピードを考えていきたいと思います。
この記事を読むと分かること
- 筋トレの動作スピードが与える筋肉への影響
- 筋肥大に効果的な動作スピード
動作スピードとレップ数の関係
筋トレでは目的に応じてレップ数を変化させるのが定説です。
目的別の最適なレップ数
- 筋力向上:1~3レップス
- 筋肥大:8~12レップス
- 筋持久力向上:15~20レップス
筋持久力向上とされるハイレップストレーニングでも筋力重視の低レップストレーニングでも筋肥大はしますが、基本的な考え方は上記の通りで間違いないです。
でもここで一つ疑問が浮かびます。
通常、動作スピードと限界レップ数は強い相関関係にあります。
動作を速くすれば、その分たくさんレップ数をこなすことができますが、動作をゆっくりにすると極端にレップ数が下がってしまいます。
となると、同じ重量を扱っても動作スピードによっては筋肥大になったり、筋持久トレーニングになったりしてしまうのでしょうか?
TUT(Time Under Tension)を考えてみる
今までは重量とレップ数だけで話をしてきましたが、もう一つ「筋肉の緊張時間」という観点で見ていきましょう。
TUTとはTime Under Tensionの略で、筋肉が緊張している時間という意味です。
同じ重量でTUTを変化させた場合に筋肉の働きがどう変化するのか調べた研究を紹介します。(参考文献)
研究内容
- 対象:13名の男性(23±4.0)
- 種目:6RMの重量で行うベンチプレス
- 方法:「ゆっくり」「普通」「速い」の異なる速度で限界まで拳上した時の筋活動を測定する
「ゆっくり」は3秒かけておろし、3秒かけて持ち上げます。
「普通」は2秒かけておろし、2秒かけて持ち上げます。
「速い」は可能な限り素早く下ろして持ち上げます。
この3種類の運動スピードの平均TUTとレップ数は次のようになりました。
- ゆっくり:24秒、3.7レップス
- 普通:26秒、6レップス
- 速い:20秒、7.9レップス
素早い動作を行うと、レップ数は増えますが、TUTは短い傾向にあることが分かります。
そして筋活動の結果が次のグラフになります。
縦軸が筋活動で、この数値が高いほど多くの筋繊維が活動に参加していることを表しています。
上記のグラフから、「ゆっくり」と「普通」では筋活動に違いがないことが分かります。
「速い」だけが唯一筋活動レベルが高かったです。
ここでモーターユニットという言葉を覚えて頂きたいです。
1本の神経と、それが支配している筋繊維のことをまとめて1つのモーターユニットと呼びます。モーターユニットの数や1本の神経が支配している筋繊維の数は部位によって異なります。
(出典:https://www.sakaimed.co.jp/knowledge/surface-electromyogram/basic/basic01/)
筋トレで軽い重量を扱う時は、全ての筋繊維が力を出すのではなく、一部のモーターユニットだけが働きます。
そして重量が上がってくると、より多くのモーターユニットが運動に参加します。
通常は重量とモーターユニットの動員数は比例関係にありますが、軽い重量でもモーターユニットをたくさん動員させることができます。
それが爆発的な動作です。
爆発的な動作は少ないモーターユニットではできず、より多くのモーターユニットが動員されます。
今回の研究で「速い」グループは爆発的動作を行ったので、モーターユニットの動員数が増え、筋活動が高かったと考えられます。そして多くのモーターユニットが一気に動員されたことで、疲労しやすく、TUTが短くなったと考えられます。
筋トレにおいてたくさんの筋繊維を疲労させることは効果的な筋肥大方法になるので、素早く動作することは筋肥大に有効なトレーニング法だと言えるでしょう。
ポイント
筋肥大と動作スピードに関する論文
運動スピードを速くすることで筋活動が大きくなり、たくさんの筋繊維を使うことができることは分かりました。
普通に考えれば「筋活動が大きい=筋肥大しやすい」という構図になると思いますが、一応最近のエビデンスを見ていきましょう。
筋肥大の効果と運動スピードの研究結果を解析したメタアナリシスを紹介します。この論文では68の文献を統計処理しています。(参考文献)
その結果、運動スピードが速い方が筋肥大効果が高いことが示されました。
メタアナリシスとは?
複数の文献を統計的に解析する分析手法。もっとも質の高い結果が得られる。
この論文では運動スピードに応じて4つのグループに分けて分析しています。
- 速い(高重量):0.5〜4秒、6~12レップス
- 速い(低重量):0.5〜4秒、20~30レップス
- 普通:4〜8秒
- 遅い:8秒以上
運動速度が速いグループだけは高重量群と低重量群に分けています。
各グループの筋肥大効果を算出して、比較した結果が次にグラフになります。
この結果をもとに筋肥大効果が高い準備並び替えると、
速い×低重量 ≧ 速い×高重量 > 通常 = ゆっくり
となります。
軽い重量で素早く拳上した場合が最も筋肥大に効果的だと分かりました。
軽い重量の方が高重量よりも爆発的な動作が可能になり、その結果、筋活動レベルが大きかったからだと思います。
なお上記の結果は筋肥大の測定方法が違う文献が混ざっているため、信頼性は少し劣るとしています。
筋肥大に効果的な運動スピード
4秒以内の速い運動スピードが筋肥大に有効
まとめ(運動スピードと筋肉の関係)
今回は運動スピードが与える筋肉への影響を見てきました。
運動スピードを速くすることで、使われる筋繊維の数が増え、より多くの筋繊維を疲労させられることが分かりました。
さらにその結果、運動スピードが速いほうが筋肥大に対して大きな効果をもっています。
レップスやセット数だけでなく、運動スピードにも注意して筋トレしてみて下さい。
運動スピードと筋肉の関係
- 爆発的な動作は筋繊維の動員数を増やす
- 4秒以内に下ろして持ち上げる素早い運動が最も筋肥大に効果的
それではまた!
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