「高重量で少ないレップ数で行うのが一番だ」
「いやいや最近は低重量で高回数で行うのが筋肥大に有効だと言われているんだぞ」
筋トレ方法をめぐる議論は今も絶えず行われており、当サイトでもケースごとに最適なトレーニング方法を提案してきました。
今回はその中の一つとして、部位ごとの筋繊維の形状から考えるトレーニング法をお伝えしていきたいと思います。
世界で活躍するボディビルダーの山岸選手も部位によって扱う重量を変えてトレーニングしているそうです。
この記事を読むと分かること
- 部位ごとの筋肉の形状
- 形状から考える最適な使用重量
- 部位ごとのおすすめトレーニングメニュー
目次
部位ごとの筋繊維の形状
筋肉を筋繊維の形状で考えると大きく2種類に分けることができます。
それが紡錘状筋(ぼうすいじょうきん)と羽状筋(うじょうきん)です。
紡錘状筋は平行筋とも言われており、筋繊維が全て平行かつ直線的に並んでいるのが特徴です。
対する羽状筋は斜めに筋繊維が配置されています。次の写真を見て頂くとイメージしやすいと思います。
(画像引用元:DNS)
紡錘状筋は短縮スピードが速い
紡錘状筋は直線的に筋繊維が並んでいるため、動作する際は全ての筋繊維が同じ動きをするため、羽状筋に比べて短縮スピードが速いのが特徴です。
その分パワーが弱いので、トレーニングは低重量×高回数で行うのが効果的とされています。
紡錘状筋の一覧
- 上腕二頭筋
- 大胸筋
- 広背筋
- 僧帽筋
- 大臀筋
羽状筋は強いパワーを発揮できる
羽状筋は斜めに筋繊維が配置されているので、紡錘状筋に比べて筋繊維の数が多いです。そのため強いパワーを発揮できるのが特徴です。
その分短縮スピードが遅いので、軽い重量でテンポよく行うトレーニングには向いていません。高重量×低回数で行うのが効果的です。
羽状筋の一覧
- 上腕三頭筋
- 大腿四頭筋
- 三角筋
- ヒラメ筋
筋肉の形状で考える使用重量
筋肉は大きく2つの形状に分けられる
- 紡錘状筋:低重量×高回数で鍛えると良い
- 羽状筋:高重量×低回数で鍛えると良い
部位ごとの速筋・遅筋比率
速筋・遅筋とは?
筋線維は、大きく速筋と遅筋の2種類に分けられ、全ての筋肉は速筋と遅筋が混在しています。
速筋は瞬発的に大きな力を出す筋肉で、筋トレなどの無酸素運動をするときに使われます。
一方、遅筋は大きな力は出せませんが、持久力を発揮する筋肉で、マラソンなどの有酸素運動で使われます。
実は速筋と遅筋の中間的な役割を果たす筋繊維もあるので、ここでは正しい筋繊維の分類方法で記載させて頂きます。
- 遅筋線維であるタイプⅠ
- 速筋線維で持久力のあるタイプⅡa
- 速筋線維で持久力のないタイプⅡx
遅筋は1種類しかありませんが、速筋は瞬発力があり持久力もそこそこあるタイプIIa、瞬発力はあるが持久力のないタイプIIxの2種類に分けられます。
筋トレをすると遅筋繊維が減って速筋繊維が増えると勘違いしている人も多いですが、どんなに高強度の筋トレをしても遅筋が速筋に変わることはありません。
でも筋トレをすると持久力が減ってしまうのは事実です。これは速筋繊維だけど持久力もあるタイプIIaが持久力のないタイプIIxに変わってしまうからです。つまり速筋同士でタイプが変わることはあり得ます。
(人間以外の動物では遅筋→速筋の変換が確認されているが、人間では確認されていない)
ポイント
筋力トレーニングしても速筋と遅筋の比率が変わることはない
筋肥大しやすいのは速筋
速筋は遅筋に比べて大きくなりやすい性質を持っているので、筋肉を大きくしたい場合は、高重量×低回数のトレーニングをメインに行うことで速筋を大きくするのが良いとされています。
筋肉によっては速筋よりも遅筋繊維の割合が多いこともあって、その場合は少ない速筋を鍛えるよりたくさんある遅筋を鍛えた方が効果的とされているよ。
筋肉は部位ごとに速筋・遅筋比率が決まっています。そして先ほど説明した通り、速筋と遅筋の比率はトレーニングによって変えることができません。
つまり遅筋繊維がほとんどを占めている部位においては、量の少ない速筋を鍛えるよりも、遅筋を鍛えた方が効果的だと言えます。
遅筋も筋肥大することができる
「遅筋繊維って筋肥大するんだっけ?」と疑問に思った方も多いはずです。
先に結論から言ってしまいますが、筋肥大しにくいと言われている遅筋ですが、それは有酸素運動の場合で、低重量×高回数の筋トレを行った場合は速筋と比べても遜色ないくらい筋肥大を起こすことができます。
MAXの80%の重量で鍛えたグループとMAXの30%の重量で鍛えたグループの筋繊維ごとの体積変化量を調べた研究があります。(参考文献)
その結果が次のグラフになります。
「高重量×低回数」のグループが18%の成長率だったのに対して、「低重量×高回数」のグループは30%も成長しています。
ちなみに速筋繊維の成長率は「高重量×低回数」が20%だったのに対し、「低重量×高回数」は18%でした。
遅筋繊維は十分筋肥大させることができ、特に遅筋繊維の多い部位においては「低重量×高回数」を取り入れることが大事です。
特に高重量を扱うトレーニングはやりすぎになってしまうことが多いので気を付けるようにしましょう。
高重量トレーニングはオーバートレーニングに陥りやすいので、セット数に気をつけてトレーニングする必要があります。
▽最適なセット数については下記記事で詳しく説明しています。
筋トレに最適なセット数は2セット!その理由を理論的に解説【筋肥大・筋力増加】
速筋比率で考える使用重量
筋肥大しやすいのは速筋と言われているが、遅筋も十分筋肥大させることができる
- 速筋比率の高い部位:高重量×低回数
- 遅筋比率の高い部位:低重量×高回数
部位ごとの速筋・遅筋比率
部位ごとの速筋と遅筋比率を下記表にまとめました。
部位 | 筋肉名 | 速筋% | 遅筋% |
胸 | 大胸筋 | 57.7 | 42.3 |
背中 | 広背筋 | 49.5 | 50.5 |
僧帽筋 | 46.2 | 53.8 | |
大円筋 | 遅筋優位 | ||
肩 | 三角筋 | 46.7 | 53.3 |
腕 | 上腕二頭筋 | 53.6 | 46.4 |
上腕三頭筋 | 67.5 | 32.5 | |
前腕 | 遅筋優位 | ||
腹 | 腹直筋 | 53.9 | 46.1 |
下半身 | 大腿直筋 | 65.6 | 34.4 |
内側広筋 | 56.3 | 43.7 | |
外側広筋 | 62.2 | 37.8 | |
大臀筋 | 47.6 | 52.4 | |
ヒラメ筋 | 11 | 89 |
ここからは最初に説明した筋繊維の形状と速筋比率から最適なトレーニング法を考えていこう!
エビデンスから明らかにする部位ごとの筋トレ法
紡錘状筋×速筋遅筋同比率
日本で行われた研究でウェイトトレーニングの経験が2年以上あるアスリートを対象にして、紡錘状筋である上腕二頭筋を「高重量×低回数トレーニング」と「低重量×高回数トレーニング」に分けて筋肥大効果を調べた研究を見ていきます。
研究内容
- 対象:20名の大学生アスリート
- 種目:上腕二頭筋(バーベルカール、プリーチャーカール、ハンマーカール)
- 期間:週3回のトレーニングを8週間
- グループSL:20レップス×30秒インターバル
- グループHL:8レップス×3分インターバル
- 両者とも3セットずつ限界回数まで行う
筋断面積の上昇率
筋力の変化率
(画像引用元:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28032435)
「低重量×高回数」は10%の筋肥大、「高重量×低回数」は5%の筋肥大となっています。
やはり紡錘状筋は高回数トレーニングで反応しやすいことが分かります。
また上腕二頭筋は速筋・遅筋比率がほぼ同等だったことも高回数トレーニングで筋肥大がよく起きたことの要因だと考えられます。
紡錘状筋×速筋優位、羽状筋×速筋優位
トレーニング経験者を対象に「高重量×低回数」と「低重量×高回数」に分けて、ベンチプレスを行い、「羽状筋×速筋優位である上腕三頭筋」と「紡錘状筋×速筋優位である大胸筋」の筋肥大を調べた研究を見ていきましょう。(参考文献)
まずはそれぞれの筋量変化を表したグラフです。
羽状筋である上腕三頭筋は「高重量×低回数」で大きくなり、紡錘状筋である大胸筋は「低重量×高回数」で大きくなる結果でした。
筋肥大に関しては筋肉の形状別で考えるのが良いかもしれません。
次のグラフはベンチプレスのMAX重量とトルクについて比較した結果です。
筋力に関して低重量トレーニングはかなり劣っており、筋力アップの観点からいうと高重量トレーニングに軍配が上がっています。
これはベンチプレスの主動筋である大胸筋が速筋優位であるからだと考えられます。
筋肥大だけを考えると紡錘状筋なので、低重量が反応しやすいですが、速筋が多いため、継続的な重量アップには高重量トレーニングも必要だと言えます。
筋トレは常に重量を伸ばしていかないと、体が重量に慣れてしまい、筋肥大が起こりにくくなります。それを防ぐためには筋肥大だけではダメで、筋力も伸ばす必要があります。
つまり大胸筋に関しては低重量と高重量のトレーニングを両方行うことで、効率よく筋肥大を起こすことができるでしょう。
▽筋トレの大原則「漸進性過負荷の法則」については下記記事を参考にして下さい。
筋トレ効果を最大限に!「使用重量を伸ばし続ける5つのコツ」を大公開
形状と速筋比率で考える筋トレ法
筋トレの方法を考える上で、筋肉の形状と速筋遅筋割合が重要であることは分かりました。
この二つを組み合わせて、整理すると次のようにまとまります。
形状と速筋比率で考える筋トレ法
- 紡錘状筋×速筋優位:高重量+低重量
- 紡錘状筋×遅筋優位:低重量
- 羽状筋×速筋優位:高重量
- 羽状筋×遅筋優位:高重量+低重量
部位別おすすめ筋トレ法
部位 | 筋肉名 | 形状 | 速筋 | 遅筋 | 筋トレ法 |
胸 | 大胸筋 | 紡錘 | 57.7 | 42.3 | 高重量+低重量 |
背中 | 広背筋 | 紡錘 | 49.5 | 50.5 | 低重量 |
僧帽筋 | 紡錘 | 46.2 | 53.8 | 低重量 | |
大円筋 | 紡錘 | 遅筋 | 低重量 | ||
肩 | 三角筋 | 羽状 | 46.7 | 53.3 | 高重量+低重量 |
腕 | 上腕二頭筋 | 紡錘 | 53.6 | 46.4 | 高重量+低重量 |
上腕三頭筋 | 羽状 | 67.5 | 32.5 | 高重量 | |
前腕 | 紡錘 | 遅筋 | 低重量 | ||
腹 | 腹直筋 | 紡錘 | 53.9 | 46.1 | 高重量+低重量 |
下半身 | 大腿直筋 | 羽状 | 65.6 | 34.4 | 高重量 |
内側広筋 | 羽状 | 56.3 | 43.7 | 高重量 | |
外側広筋 | 羽状 | 62.2 | 37.8 | 高重量 | |
大臀筋 | 紡錘 | 47.6 | 52.4 | 低重量 | |
ヒラメ筋 | 羽状 | 11 | 89 | 高重量+低重量 |
今までなんとなく決めていた部位ごとの使用重量をこの表をみて考え直してみて下さい。
それではまた!
まとめ
- 高重量と低重量どちらが効くかは部位によって異なる
- 「筋繊維の形状」と「速筋比率」によって筋肉を発達させやすいトレーニング法が分かる
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