「仕事が忙しくて筋トレができない」
「ケガをして筋トレをしばらくできそうにない」
筋トレは習慣的に行うものですが、様々な事情でトレーニングができなくなってしまうことがあるはずです。
仕事が忙しかったり、病気になってしまったり、長期の旅行に出かけたり。。
そんなとき「どれくらい休むと筋肉が落ちるか」気になると思います。
この記事では筋肉が落ちるスピードについて、エビデンスを元に解説していこうと思います。
この記事を読むと分かること
- 1か月トレーニングを休んだ場合の筋肉量の変化
- トレーニングをやめるとすぐに筋肉が小さくなったように感じる原因
- 経験者と初心者の違い
- 完全に安静にしていた場合の筋肉量の変化
初心者の場合
トレーニングの休止期間に関する研究をもとに、筋肉が落ちる速度について解明していこうと思います。
まず紹介するのが、筋トレ初心者を対象に「15週間トレーニングを続けたグループ」と「6週間トレーニング→3週間完全休養→6週間トレーニングをするグループ」に分けて、筋力や筋肉量を比較した研究です。[1]
研究内容
- 対象:筋トレ初心者の男性15名
- 期間:15週間
- グループ(休止期間なし):15週間トレーニングを継続
- グループ(休止期間あり):6週間トレーニング→3週間休養→6週間トレーニング
- トレーニング内容:MAX75%のベンチプレス
片方は筋トレを継続して行い、もう片方は筋トレを3週間まったくやらない期間を設けています。
今までの常識で考えると、3週間も筋トレを休むと筋肉が落ち、15週間後の筋量には大きな差があるだろうと思ってしまいます。
実際どのような結果が得られたのか見ていきましょう。
一か月なら筋肉はほとんど落ちない
まずは上腕三頭筋と大胸筋の筋断面積を調査した結果です。
上腕三頭筋
大胸筋
この結果を見ると、意外にも3週間筋トレを休んでも、筋量があまり落ちていないことが分かります。
筋トレ歴6週間の人がいきなり3週間休んでも、増えた筋肉のうちたった25%しか減っていないのです。
またトレーニングを継続した人はトレーニング歴が長くなるにつれて、筋肉量が増えにくくなっています。
これは筋トレの刺激に体が適応してしまったからです。
トレーニング上級者は筋量がほとんど変わらないのに、初心者は1年間で10kg近く筋肉を増やすことができるのは”慣れ”が原因です。
一方、休止期間がある人は、トレーニング復帰後の筋肥大速度が速いことが分かります。これは3週間休んだため、体が筋トレによる刺激を忘れ、新鮮な状態でトレーニングを再開したからです。
続いて筋力についても見ていきましょう。
研究ではベンチプレスのMAXを0、6、9、15週間で測定していました。その結果がこちらです。
ベンチプレスのMAX重量も筋量の変化と同じ動きをしています。
3週間筋トレを休んでも、ほとんどMAX重量は変わらず、トレーニングを再開すると、大きく記録が伸びています。
筋トレをやめても1か月程度であれば筋力は衰えないことが分かりました。
最後に試験前と試験後の変化率を見ていきましょう。
「休止期間なし」に比べると、3週間休止期間を設けた方が筋肉量・筋力ともに若干劣っています。
しかし3週間休んだ割にはあまり変化がないと考えることもできます。
短期間であればトレーニングを休んでしまっても問題ないといえるでしょう。
経験者の場合
続いて、トレーニング経験者がトレーニングを2週間中止した場合の筋肉量と筋力を調査した研究を紹介します。[2]
研究内容
- 対象:筋トレ経験者20名
- 期間:10週間(4週トレーニング+2週休養+4週トレーニング)
- グループ(プラセボ):25gの糖を毎トレーニング後、休養中は毎日摂取
- グループ(ホエイプロテイン):25gのプロテインを毎トレーニング後、休養中は毎日摂取
- トレーニング内容:レッグプレス
まずは筋肉量を表す「筋断面積の変化」を見ていきましょう。
2週間の休養をした後も、筋断面積に有意な変化は見られません。
トレーニング経験者についても初心者と同様、短期間トレーニングを休んだだけでは筋肉量は減らないことが示されました。
またホエイプロテインを飲んだグループとプラセボを比較しても有意な差は見られませんでした。
2週間程度の休養であれば、積極的にタンパク質を摂取しなくても、筋肉は落ちないということです。
筋力も同様の結果が出ています。
2週間の休養後も筋力は減るどころか、むしろ増え続けていました。
2週間程度トレーニングを休んでも筋力にはほとんど影響しないことが言えます。
他の研究でも、最大4週間トレーニングを休んでも筋力が保持される結果が出ています。[3]
しかし4週間以降は筋量と筋力の両方が減衰し始め、時間とともに減量率が多くなります。
これらの結果を総合的に考えると、トレーニング経験者が筋肉を維持できる期間は3~4週間となりそうです。
トレーニングを休むと筋肉が減ったように感じる原因は?
でも2週間休んだときに明らかに筋肉が小さくなったように感じたのはなぜ?
これまで紹介してきた研究結果は筋断面積を調べたものでした。
筋断面積は筋肉量だけを見ているわけではなく、実は水やグリコーゲンも含んだ状態で見ています。
水やグリコーゲンがトレーニングをやめた途端に減ってしまうと、筋肉は減っていないのに、減ったような結果が出てしまう可能性があるのです。
水とグリコーゲンの影響をなくして、もう一度考えていきましょう。
筋肉は100gあたり約4gのグリコーゲンを貯蔵することができます。
グリコーゲンは1gあたり3gの水と結合します。
したがって筋肉100gは最大でプラス16g(グリコーゲン4g+水12g)の116gになることができます。
トレーニングをやめることで、グリコーゲンの貯蔵量が減り、そのため筋肉量が変わったように見えるのではないかという疑問も浮かび上がってきます。
そこでトレーニングをやめる前とやめた後の筋グリコーゲン貯蔵量を調べた研究結果を見ていきます。[5]
なんとトレーニングをやめてから、たった1週間たつだけで約20%のグリコーゲンが失われてしまうという結果がでていました。
さらに4週間たつと40%ものグリコーゲンがなくなってしまいます。
このデータを使って、最初に紹介した研究結果に補正をかけると面白い結果になります。
上腕三頭筋
大胸筋
大胸筋ではトレーニング休止期間中(6~9週)も筋肉量が大きく減ることなく、ほとんど変化していません。
一方、上腕三頭筋では筋肉量が少しだけ増えていることが分かります。
これは6週目までに行っていたトレーニングからの超回復で筋肉量が増えた影響だと考えられます。
筋肉に貯蔵されているグリコーゲンのことまで考えると、筋肉は少なくとも3週間のトレーニング休止では減らないことが分かりました。
ベッドで安静にしている場合
いままでの研究結果は、トレーニング休止期間中は普段通りの生活を送るという前提でした。
しかしトレーニングを続けている人がトレーニングをやめるときというのは、何か病気やケガの場合も多いと思います。そこで今度はベッドで1週間安静に過ごしたときの筋肉量の変化を調査した研究結果をご紹介します。[4]
研究内容
- 対象:若い男性10名
- 期間:1週間
- 内容:ベッドで1週間安静にした前後で「除脂肪体重」と「大腿四頭筋の筋断面積」を比較
1週間ベッドで安静に過ごすことで、除脂肪体重(脂肪を除いた体重のことで、筋肉量との相関性が高い)が2.5%減少しました。
特に体幹と脚の筋肉量の減少が大きくなりました。
また大腿四頭筋の筋断面積も3.2%減少となっていることからグリコーゲンの減少だけではなく、明らかに筋肉が減っていることが分かります。
ちなみにこの研究では食事は栄養バランスの良いものをとっていたため、実際病気で寝込んだ場合にはもっと筋肉が減ってしまう可能性もあります。
【結論】1か月の休養は問題なし、筋トレをあきらめないで!
トレーニングを休む場合の筋肉量の変化に着目して、いろいろな文献を紹介してきました。
さまざまな研究結果から結論を導き出すと、
経験者・初心者ともに1か月程度の休憩期間なら筋肉量は変化しないことが分かりました。
まとめ
- 経験者・初心者ともに1か月程度の休憩期間なら筋肉量は変化しない
- 2週間の休養であれば高タンパクな食事をとらなくても筋肉は維持可能
- トレーニングを数週間休んだときに筋肉が小さくみえるのは水分が抜けたから(筋肉が減ったわけではない)
- 病気などで一日中横になっているときは1週間で筋肉が減少する
もしあなたがケガなどでトレーニングを休むかどうか迷っているなら、勇気をもって休むようにしてください。
そしてケガをしっかり回復させてまた筋トレに励みましょう。
それではまた!
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参考文献
[1]Effects of periodic and continued resistance training onmuscle CSA and strength in previously untrained men.
[2]Resistance Training–Induced Elevations in Muscular Strength in Trained Men Are Maintained After 2 Weeks of Detraining and Not Differentially Affected by Whey Protein Supplementation.
[3]Muscular characteristics of detraining in humans.
[4]One Week of Bed Rest Leads to Substantial Muscle Atrophy and Induces Whole-Body Insulin Resistance in the Absence of Skeletal Muscle Lipid Accumulation
[5]Metabolic characteristics of skeletal muscle during detraining from competitive swimming.
(https://sci-fit.net/detraining-retraining/)