「運動は体に良い」というのはある意味常識的ですよね。
しかしごく稀に運動は体に悪いと言われることもあります。
実際ハードな練習を続けているマラソン選手の中には実年齢よりも老けて見える選手が多くいます。
アメリカではランナーのたるんだ老け顔のことを”ランナーズフェイス”と皮肉っぽく言ったりもします。
運動すると老けてしまう原因には「活性酸素」が深く関係しています。
この記事では活性酸素と運動の関係について詳しく解説していきます。
この記事を読むと分かること
- 運動をする人としない人の寿命差
- 寿命を延ばすスポーツの種類
- 寿命を延ばす方法
目次
運動と寿命の関係
100万人以上の男女を対象にした研究では、運動する人は運動をしない人に比べて遥かに死亡率が低いと結論づけています。[1]
年齢別の死亡率を運動歴に分けた結果が次の表になります。
この表からは運動をすればするほど死亡率が下がっていることが分かります。
とりわけ「運動を少しでもする人」と「運動をまったくしない人」の間には大きな差があります。
運動することで長生きできるのは確かなようです。
平均余命はなんと10~15年も差が出てしまうという結果がでています。
運動の種類と寿命の関係
運動といってもバスケットボールやランニング、筋トレなど様々なスポーツがあります。
また家事や散歩なども運動と言えるかもしれません。
これら全てが寿命に対して同じ効果を持っているわけはなさそうです。
そこでご紹介するのがイギリス人8万人を対象にして行われた研究です。[2]
この研究では6つのカテゴリーにスポーツ競技を分けて、心疾患リスクの低下率を調査しています。
競技 | 心疾患リスクの低下率 |
ラケット競技 | 57% |
水泳 | 41% |
エアロビクス | 36% |
サイクリング | 変化なし |
フットボール | 変化なし |
ランニング | 変化なし |
家事 | 変化なし |
ガーデニング | 変化なし |
ラケット競技(バドミントン、卓球、テニス)が最も心疾患リスクを下げることが分かりました。
次いで水泳、エアロビクスの順番になります。
ここで注目すべきなのが、ランニング・サイクリングといった代表的な有酸素運動は心疾患リスクを下げないという結果になったことです。
この原因については後ほど詳しく説明しますが、長時間におよぶハードな運動は活性酸素を増やしてしまうために、病気予防や長寿にはつながらないと考えられます。
また家事やガーデニングといった負荷の小さい運動でも心疾患リスクは下がりませんでした。
健康になるためには、もっと高い強度の運動が必要になります。
活性酸素とは
生命には必ず死が訪れます。
種の繁栄のために、新しい命を生み、育て終わった人間は生物学的にはすでに不要な生き物です。
もし生殖年齢を超えた生物がいつまで経っても生き残っていれば、まだまだ若い生物とエサの取り合いをしたり、種の繁栄を妨げる可能性があります。
それゆえに私たちには「老化」によって死が訪れるように設計されているのです。
この老化現象をもたらすのが「活性酸素」です。
老化現象は「酸化ストレス」とも言われ、細胞や組織に生じるラジカル(=活性酸素)が起こす有害反応による障害の蓄積が原因だとされています。
ラジカルは電子が足りない原子または分子なので、電子を求めて激しく反応を起こします。そしてこのラジカルが体にとって起きてほしくない有害反応を起こすのです。
運動を行うことでも体内に大量の活性酸素(スーパーオキシドアニオンラジカル)が発生します。
この活性酸素はあらゆる細胞にアタックして損傷させ、老化、生活習慣病、ガンなどを引き起こすと言われています。
活性酸素の発生源
活性酸素の発生源として次の6つが挙げられます。
活性酸素の発生源
- エネルギー産生
- 酵素反応
- 異物除去
- 生体防御反応
- 炎症反応
- ストレス反応
エネルギー産生による活性酸素の発生
私たち人間が運動する時に必要なエネルギーを作り出すのはミトコンドリアです。
エネルギーの工場とも言えるミトコンドリアは酸素を使ってエネルギーを作ります。その際に放出されるのが活性酸素です。
つまり運動をすればするほど活性酸素の発生量が増えるのです。
活性酸素を発生させないのは不可能
人間が生活していく上で必要なエネルギーを作るのにも活性酸素が必要なのであれば、活性酸素を全く発生させないのは不可能です。
エネルギー産生以外にも、ストレスを感じたときや、体調を崩した時にも活性酸素は発生してしまいます。
何時間にも及ぶ運動は過剰な活性酸素を発生させてしまうため、避けた方がいいでしょう。
しかしそれ以外に関しては避けようと思って避けられることではありません。
それよりも発生してしまった活性酸素をいかに除去していくかを考えた方が良いでしょう。
運動は抗酸化能力を高める
運動をすることで活性酸素が発生してしまうことは先ほどお話ししました。
ただ軽い運動による活性酸素で体がやられているようでは何十年も生きていくことはできません。
人間の体には「抗酸化能力」と呼ばれる活性酸素を除去する力があります。
この抗酸化能力は適度に活性酸素が発生することによって高めることができます。
筋トレと同じでストレスを与えれば、より強くなろうと体が反応するのです。
運動によって活性酸素を発生させることで、体はもっと強い体にならなくてはいけないと感じ、抗酸化能力を高めることができます。その結果、運動をしていない間にも、より多くの活性酸素を除去できるようになります。
ここで運動の種類と心疾患リスクの低下に関する話を思い出して下さい。
ランニングやサイクリング等の長時間に及ぶハードな運動は心疾患リスクを下げないという結果でした。これは抗酸化能力の向上分と同じくらいたくさんの活性酸素が発生してしまったからだと考えられます。
また家事などの負荷が非常に低い運動では抗酸化能力を高めることができないことも先ほどの結果が示していますね。
抗酸化能力を高めつつ、体内に発生する活性酸素を減らすためには、運動をしなさ過ぎても、しすぎてもダメだということです。
ラケット競技や水泳、筋トレといった1時間以内で終わる運動や、休憩をはさむ運動が良いでしょう。
活性酸素を除去して寿命を伸ばす方法
いつまでも健康でいるためには、活性酸素を除去し続けてなるべく若い身体でいることが大切です。
そのためには「抗酸化能力を高める」と同時に「活性酸素を積極的に除去する」必要があります。
運動をしていないにも関わらず抗酸化作用を持つ食品を大量に摂取してしまうと、体が本来持っている抗酸化能力を高めることができなくなってしまいます。
言い換えると体が本来持っている自浄作用がなくなってしまうのです。
これについて決まった見解はありませんが、活性酸素に対して強い体を作るためには、運動によって抗酸化能力を高め、加えて抗酸化作用をもつ食品を摂取することが大切だと考えられます。
特にビタミンEとビタミンCは必ず摂取したい抗酸化物質です。
ビタミンEは細胞膜に穴を空けてしまう「脂肪酸ラジカル」を除去する効果を持っています。
ビタミンCは運動によって発生してしまう「スーパーオキシドアニオンラジカル」を除去する効果を持っています。
そしてビタミンEとCは互いに活性酸素を除去する力を助け合うことができます。マルチビタミンサプリメントの形で両方一緒に摂取するのが手軽です。
老化防止方法(活性酸素除去)
- 適度な運動を週に2回以上行う
- ラケット競技、水泳、筋トレがおすすめ(ランニングはNG)
- ビタミンCとビタミンEを摂取する
適度な運動と抗酸化物質で健康に!
今回は運動と寿命に関して説明してきました。
運動はまれに「老化を促進する」や「寿命を縮める」なんて言われることがありますが、あながち間違いではなさそうです。
特に長時間にわたるハードな運動(ランニングやサイクリング)は避けた方がよさそうです。
その一方で、適度な運動は間違いなく寿命を延ばしてくれます。
加えてしっかり抗酸化物質を摂取して、いつまでも若々しく健康な体でいられるように頑張っていきましょう!
まとめ
- 適度な運動は平均余命を10年以上伸ばす可能性がある
- ただしランニングにはその効果が低い
- 健康にはラケット競技・水泳・筋トレが望ましい
- ビタミンCとEは老化の原因である「活性酸素」を除去してくれる
最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた!
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▽ビタミンCの効果については次の記事で詳しく解説しています。
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筋トレにビタミンCが欠かせない理由【摂取量とタイミングも解説】
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参考文献
[1] Associations of specific types of sports and exercise with all-cause and cardiovascular-disease mortality: A cohort study of 80 306 British adults
[2] SOME PRELIMINARY FINDINGS ON PHYSICAL COMPLAINTS FROM A PROSPECTIVE STUDY OF 1,064,004 MEN AND WOMEN