「筋肉は超回復によって増強する」
日本では長年正しいとされてきた筋肥大メカニズムですが、実はこれは間違いだったのです。
でも超回復理論にしたがってトレーニングしてきた人の多くは筋肉増強に成功しています。これは超回復理論は正しくはないけど、トレーニングの考え方としては正しいからです。
この記事では超回復理論のどこが間違いなのかを真の筋肥大メカニズムを説明しながら紐解いていきます。
真の筋肥大メカニズムを知ることで、トレーニングの考え方を見直していきましょう。
この記事を読むと分かること
- 超回復理論とは何か
- 超回復理論のどこが間違っているのか
- 筋肥大の本当のメカニズム
目次
超回復理論とは
日本で長年トレーニングの常識とされてきた超回復は、
- 筋力トレーニングを行う
- 筋繊維が損傷する
- 48~72時間たつと回復し、トレーニング前以上の筋肉がつく
上記のように、筋繊維の損傷を修復する過程で、もとのレベル以上に太く強い筋肉がつくことを指しています。
つまりトレーニングで筋繊維を破壊し超回復する一連の流れを繰り返すことで徐々に筋肉が発達すると思われていました。
上の図が超回復理論を模式的に示した図です。トレーニングを行うと一時的に筋力が減少しますが、48~72時間の超回復期間を経て筋力が少し向上します。
超回復理論は筋グリコーゲンの理論と混同されている
筋トレの超回復理論はグリコーゲンの超回復と混同されて認識されるようになってしまったのです。
- 超回復 ≠ 筋肥大メカニズム
- 超回復=筋グリコーゲンの回復メカニズム
トレーニング中にエネルギー源として使用されるグリコーゲンが、48~72時間後に元の筋グリコーゲン量よりも多くなる現象を超回復と呼びます。
これがいつしか筋肥大メカニズムとして混同されるようになってしまったのです。
真の筋肥大メカニズム
超回復が違うのであれば、筋肥大の本当のメカニズムって何なんでしょうか。
それは「ストレスに対する適応反応」です。
人間の体はストレスを受けると、それに適応し、ストレスから身を守ろうとします。
ストレスに対する適応反応は、三段階に分けることができます。
筋肥大メカニズム(ストレスに対する適応反応)
- 警告反応期:筋肉痛、疲労感
- 抵抗期:筋肥大、筋力アップ
- 疲弊期:オーバートレーニング
身体はストレスを受けると、警告反応期に入り、筋肉痛や疲労感など体に警告を発します。
そしてこのストレスに負けないように筋肉を発達させます。ここまでが筋肥大の本当のメカニズムになります。
三番目の疲弊期は、ハードなトレーニングをやりすぎて、ストレスに適応できなくなってしまった状態です。体調を崩したり、筋肉が分解したりします。
超回復理論では筋繊維の破壊を起こすほど、筋肥大が起きると解釈されがちですが、真のメカニズムから考えるとなるべくオーバートレーニングを避けることが大事だと分かります。
適切なストレス量
筋肥大に必要なストレス量についても最近の研究で明らかになっています。[1]
この研究では、筋肉のダメージが大きい場合でも筋肉の合成速度が速くなるわけではないとする結果が得られています。
101理論なんて呼ばれたりもしますが、現在の筋肉が100の能力だとしたら、101の刺激を与えればいいのです。
筋肉にダメージを与えた量は関係なく、ほんの少しだけでも限界突破すれば、それは筋肥大に繋がるのです。
これを知らずになるべくたくさんの刺激を与えても、筋肥大効果は得られず、むしろオーバートレーニングに陥り筋分解が起きてしまいます。
筋肥大は200でも150でもなく、たった101の刺激で十分なんです。
適切なストレス量
- 101の刺激で十分筋肥大は起こる
- 過剰なストレスはオーバートレーニングになり、筋肉が分解される危険がある
筋肉にストレスを与えられたか確認する方法
筋肥大メカニズムでもお話しした通り、体がストレスを感じた場合は、警告反応期に入り、何かしらの警告を出します。
その代表例が筋肉痛です。
つまりトレーニングでほんの少しでも筋肉痛がくれば間違いなく101以上の刺激が与えられていると思って下さい。
逆に言えば、ひどい筋肉痛や数日間続く筋肉痛が発生した場合は、トレーニングのやりすぎだと思って下さい。
ただ101の刺激だけを本当に与えることができたら、恐らく筋肉痛は来ないでしょう。
つまり筋肉痛がこなくても101の刺激を与えられている可能性はあります。
したがってトレーニングの際、限界回数まで追い込んだのに筋肉痛がこないからといって心配する必要はありません。
適切なストレス量の判別法
- 筋肉痛がきた:筋肥大に十分な刺激
- 何日間も続く筋肉痛がきた:トレーニングのやりすぎ
- 筋肉痛がこない:適切な重量で限界回数まで追い込んだのであれば101以上の刺激になっているはず
筋肥大に必要なストレスの種類
筋肥大が起きるにはストレスを与える必要があるとお話ししてきました。
実はこのストレスは2種類あります。
筋肥大に必要なストレスの種類
- 物理的ストレス
- 化学的ストレス
筋トレで一般的なのは、重い重量を扱うことで物理的に筋肉にストレスを与える方法です。
これはMAXの80%程度の重量で追い込むやり方です。
最近では「低重量×高回数」と呼ばれるようにMAXの40%程度の重量を20レップス以上行うことでも、「高重量×低回数」と同等の筋肥大効果が得られることが分かってきました。
これが化学的ストレスによる筋肥大です。
筋肉が長時間緊張した状態を維持することで、筋肉内に疲労物質が溜まってきます。さらにエネルギー源の枯渇や酸素不足といった筋肉への栄養不足も生じます。
こういった筋肉の環境悪化が化学的ストレスとなり筋肉を発達させるシグナルが送られるのです。
化学的ストレスを与えられているかどうかの判断は「バーンズ」が起きるかどうかです。
バーンズは筋肉内に疲労物質が溜まった際に生じる筋肉が焼け付くような痛みのことです。大体20レップスを超えたあたりから感じるようになるはずです。
バーンズを感じて数レップストレーニングを継続することで、筋肉に化学的ストレスを与えることができます。
▽レップ数についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
適切な回復期間
超回復理論では48~72時間の休養期間がベストだと考えられてきましたが、これも間違いなのでしょうか?
結論から言いますと、48~72時間の休養期間を摂ることは正しいです。
筋肉は常に合成と分解を繰り返していて、合成が盛んにおこなわれ、分解が抑えられれば、筋肉量は増えます。
筋トレを行うと、たんぱく質を摂取した際の筋肉合成が盛んになります。それと同時に筋肉を分解する力も働きます。
タンパク質を摂取した際に筋肉合成が盛んになるのはトレーニングをしてから48時間までです。
一方でトレーニングした際に発生するストレスホルモン「コルチゾール」は筋肉を分解するやっかいものですが、実はこのコルチゾールはトレーニング60時間後も高いレベルで存在するのです。
合成効果がなくなるまでに48時間、分解が収まるまでに60時間以上かかるので、72時間(中3日)は同一部位のトレーニングを避け休養期間とするのが適切です。
ストレスホルモンの放出を抑えてくれるグルタミンサプリメントを摂取している方であれば、筋タンパク合成感度が鈍くなる48時間でトレーニングを再開しても良いでしょう。
▽回復期間やグルタミンについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
筋肥大メカニズムのまとめ
筋肥大の正しいメカニズムは超回復ではなく、ストレスに対する適応反応でした。
真の筋肥大メカニズムについてまとめると下記の通りになります。
まとめ
- 超回復理論はグリコーゲン回復メカニズムのこと
- 筋肥大する本当のメカニズムは「ストレスに対する適応反応」
- 過剰なストレスは筋肉を分解してしまうので、101の刺激を与えることが重要
- 物理的ストレスが筋肥大に有効、化学的ストレスは補助的に与えるのがベスト
- トレーニングの休息期間は72時間を目安にする
筋肥大メカニズム=ストレスに対する適応反応
- 適切なストレス量:少しでも筋肉痛がくれば十分
- ストレスの種類:高重量トレによる物理的ストレス、高回数トレによる化学的ストレス
- 回復期間:72時間(中3日)
長年、超回復理論を正しいと思ってきた私は当初ビックリしました。
でもメカニズムが違うからといって、そこまで大きくトレーニング方法を変える必要は有りません。
オーバートレーニングを避けるために、激しい筋肉痛が来るまで追い込まないようにし、同一部位は中3日あけてトレーニングすればOKです。
それでは良いトレーニングを!
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参考文献
[1]Resistance training-induced changes in integratedmyofibrillar protein synthesis are related to hypertrophyonly after attenuation of muscle damage