筋トレには数えきれないほど多くのトレーニング種目があります。
数ある種目の中から一日のトレーニング内容を決める時、あなたはどうしていますか?
「あいているマシンや器具の状況でいつも変わる」
「高重量を扱えるトレーニングしかやっていない」
「パンプ感が欲しいからケーブル種目が多い」
おそらく何かしらのこだわりがあってトレーニング内容を決めてると思います。
でもそれが本当に筋肥大に最適なトレーニングなのでしょうか。
今回お話しする内容は、トレーニング種目を大きく3種類に分けることで、筋肉をバランスよく発達させる「POF法」です。
種目の選び方を考える上でとても大事な内容になるので、ぜひ最後まで読んでいって下さい。
この記事を読むと分かること
- POF法とは何か?
- POF法のメリット
- トレーニング種目の選び方
POF法について
POF法とは
POF法とは「Position Of Flexion」の略で、日本語訳すると「屈曲位置」という意味になります。
元はIronmanの編集者であるSteve Holmanが筋肉を最速で大きくするために編み出したトレーニング法だと言われています。
筋トレにはたくさんのトレーニング種目がありますが、種目によって一番負荷がかかるポジションが違います。
上腕二頭筋を例に挙げると、ケーブルアームカールは収縮ポジションで一番負荷がかかります。一方インクラインダンベルカールはストレッチポジションで一番負荷がかかります。
最大負荷がかかるポジション別に3つの種目があります。
POFの種類
- ミッドレンジ種目:筋肉が最大伸展と最大収縮の中間で最も負荷がかかる
- ストレッチ種目:筋肉が最大伸展した時に最も負荷がかかる
- コントラクト種目:筋肉が最大収縮した時に最も負荷がかかる
POF法は3種類の種目のうち、どれか一つに偏ってトレーニングせず、3種目を満遍なくトレーニングすることで筋肥大を早めるトレーニング法になります。
POF法とは
ミッドレンジ種目・ストレッチ種目・コントラクト種目を満遍なく行うトレーニング方法
筋肥大のメカニズム
POF法のメリットを説明する前に、筋肥大のメカニズムについてサラッとおさらいしましょう。
「筋トレの超回復理論は嘘?筋肥大メカニズムを知りトレーニングに活かす」でも説明しましたが、筋トレで筋肉が増えるメカニズムはストレスに対する適応反応です。
筋トレによって筋肉に強いストレスが加わると、IGF-1(インスリン様成長因子)が分泌され、筋肉を合成しようとします。
これによってもう一度同じストレスが与えられても抵抗できる体を作るのです。
したがって筋肥大させるためには、筋肉に適切なストレスを与えて、IGF-1を分泌させることが大事です。
IGF-1を分泌させるストレスには大きく分けて2つあります。
筋肥大に必要なストレスの種類
- 物理的ストレス(高重量orストレッチ)
- 化学的ストレス
①の物理的ストレスは、重い重量を扱うことで物理的に筋肉にストレスを与える方法です。
物理的ストレスを与えるには、6~10レップスで限界になる重量が最適です。
少しややこしいですが、この物理的ストレスには2種類の方法があります。
1つ目はとにかく高重量をもって筋繊維を損傷させる方法です。ベンチプレスやスタンディングバーベルカール等の高重量を扱えるミッドレンジ種目が代表的です。
2つ目は1つ目ほど重量を扱わない代わりにストレッチポジションで最大負荷を与えて筋繊維を損傷させる方法です。これはダンベルフライやインクラインアームカールといったストレッチ種目で与えることのできるストレスです。
最近では「低重量×高回数」と呼ばれるようにMAXの40%程度の重量を20レップス以上行うことでも、「高重量×低回数」と同等の筋肥大効果が得られることが分かってきました。
これが②の化学的ストレスによる筋肥大です。
筋肉が長時間緊張した状態を維持することで、筋肉内に疲労物質が溜まってきます。さらにエネルギー源の枯渇や酸素不足といった筋肉への栄養不足も生じます。こういった筋肉の環境悪化が化学的ストレスとなり筋肉を発達させるシグナルが送られるのです。
化学的ストレスを与えやすいのは収縮ポジションで負荷のかかるコントラクト種目です。
ポイント
POF法では筋肉にさまざまなストレスを与えることで筋肥大を促す
POF法のメリット
POF法のメリットは次のようにまとめることができます。
POF法のメリット
- 色々な角度からストレスを与えるので筋合成が起こりやすい
- 筋肉がバランスよく発達する
- 目的に応じた筋肉を作ることが可能
POF法の最大のメリットは、一度のトレーニングで筋肥大に必要な全てのストレスを与えることが可能なことです。
物理的刺激だけでは筋合成に必要なIGF-1の分泌量は限られますが、これに化学的刺激を加えることで、さらにIGF-1を分泌させることができます。
その結果、早く筋肥大させることが可能になるのです。
また対象筋を満遍なく鍛えることで、バランスよく発達した筋肉を得ることができます。
上腕二頭筋を例に挙げると、ストレッチ種目をばかり行っていると、腕を伸ばした時の太さはありますが、収縮させたときの力こぶが小さい、またはカットが弱いなんてことが起こります。
逆も同じでコントラクト種目ばかり行っていると、力こぶは大きいですが、リラックスした状態だと腕が細く見えてしまいます。
POF法では最大負荷のポジションが異なる3種目を満遍なく行うので、バランス良く筋肉を発達させることができます。
メリット3つ目はPOF法の応用になりますが、目的に応じて3種類の種目のうちどれかを集中して鍛えることで、偏った筋肉を得ることもできます。
例えばボディビルのようにダブルバイセップス、サイドチェストといった筋肉を収縮させた状態でのバルクが求められる場合は、意図的にコントラクト種目を増やすことで見栄えのいい筋肉を作ることができます。
一方フィジークでは筋肉を収縮させた状態でのポージングは少ないため、ストレッチ種目重視でプログラムを組むことも有効です。
POF法における各種目について
POF法は基本的にミッドレンジ・ストレッチ・コントラクトの3種目を行うトレーニングプログラムです。
ここではそれぞれの種目について具体的なトレーニング種目を紹介していきます。
ミッドレンジ種目
可動域の真ん中で最も負荷がかかる種目がミッドレンジ種目です。
高重量を扱えるトレーニングが多いため、物理的ストレスを筋肉に与えることができます。
ミッドレンジ種目の代表例を紹介しておきます。
ミッドレンジ種目の例 | |
大胸筋 | ベンチプレス |
背中 | 懸垂、ベントオーバーローイング |
上腕二頭筋 | スタンディングバーベルカール |
上腕三頭筋 | ライイングトライセプスエクステンション |
三角筋 | ショルダープレス |
脚 | スクワット |
ミッドレンジ種目は高重量を扱えるために、筋肥大に必要なストレスを簡単かつ強烈に与えることができます。
したがってトレーニングの最初にミッドレンジ種目をもってくると良いでしょう。
セット数やインターバルについては下記を参考にして下さい。
ミッドレンジ種目まとめ
- 順番:最初
- 回数:6~10レップス
- 重量:上記回数で限界となる重量
- セット数:2セット
- インターバル:3~5分
インターバルが長いと感じる方もいると思いますが、高重量トレーニングは長時間インターバルで筋力・筋肉量ともに発達しやすいことが最近の研究から明らかになっています。
▽詳細を知りたい方は下記記事を参考にして下さい。
筋トレに最適なインターバルを科学的に説明。短時間インターバルは逆効果!?
ストレッチ種目
筋肉が伸びきった時に最も負荷がかかる種目をストレッチ種目と言います。
筋繊維にストレッチがかかった状態で高負荷を与えることで、筋損傷をともなう物理的ストレスを与えることができます。
ストレッチ種目の例 | |
大胸筋 | ダンベルフライ |
背中 | プルオーバー、(懸垂) |
上腕二頭筋 | インクラインダンベルカール |
上腕三頭筋 | オーバーヘッドエクステンション |
三角筋 | インクラインサイドレイズ |
脚 | シシースクワット |
ストレッチ種目は筋肉が引き伸ばされる際に筋膜も一緒に動きます。筋膜は筋肉を覆っている膜ですが、これがストレッチされることで、筋肉が大きくなれるスペースが広がります。
筋膜が広がる効果はミッドレンジやコントラクト種目では得られないものなので、各部位一種目は必ずストレッチ種目を取り入れるのが良いです。
セット数やインターバルについては下記を参考にして下さい。
ストレッチ種目まとめ
- 順番:2番目
- 回数:8~12レップス
- 重量:上記回数で限界となる重量
- セット数:2セット
- インターバル:3~4分
比較的高重量を扱うことから、インターバルは長めにとりましょう。
そしてストレッチ種目は非常にケガのしやすい種目なのでメインセットの前に必ずウォーミングアップを入れるようにして下さい。
コントラクト種目
筋肉が縮んでいる時に最も負荷がかかる種目をコントラクト種目と言います。
最大収縮時は血管が圧迫させた状態になるため、疲労物質が溜まりやすいため、化学的ストレスを与えやすいです。化学的ストレスを最大限与えるためには、比較的軽い重量で高回数のトレーニングを行うと良いです。
コントラクト種目の例 | |
大胸筋 | ケーブルクロスオーバー |
背中 | ケーブルプルオーバー、マシンローイング |
上腕二頭筋 | プリーチャーカール |
上腕三頭筋 | プッシュダウン |
三角筋 | ケーブルサイドレイズ |
脚 | レッグエクステンション、レッグカール |
コントラクト種目はミッドレンジやストレッチと異なり「低重量×高回数」で追い込むことになります。
重量はあまり扱わないので、疲労がたまってきたトレーニング後半でも十分追い込むことができます。トレーニング最後の追い込みとして使うのが効果的です。
セット数やインターバルについては下記を参考にして下さい。
コントラクト種目まとめ
- 順番:最後
- 回数:15~20レップス
- 重量:上記回数で限界となる重量
- セット数:4セット
- インターバル:2~3分
高回数行うトレーニングはインターバルが短めがいいと言われることもありますが、科学的な根拠はありません。
むしろ低重量×高回数でもしっかりインターバルをとることで筋肥大効果が高まる研究結果が数多くあります。
最低でも2分は休憩するようにして下さい。
POF法のやり方
1部位につき、ミッドレンジ・ストレッチ・コントラクトをそれぞれ1種目ずつ選び、合計3種目のトレーニングを行います。
トレーニングは高重量を扱える順に行うと効率がいいので、下記の順番で行いましょう。
ミッドレンジ ⇒ ストレッチ ⇒ コントラクト
POF法のやり方
- 第1種目:ミッドレンジ
- レップ数:6~10回
- 重量:上記回数で限界となる重さ
- セット数:2セット(アップを除く)
- インターバル:3~5分
- 第2種目:ストレッチ
- レップ数:8~12回
- 重量:上記回数で限界となる重量
- セット数:2セット
- インターバル:3~4分
- 第3種目:コントラクト
- レップ数:15~20回
- 重量:上記回数で限界となる重量
- セット数:4セット
- インターバル:2~3分
POF法の具体例
POF法は大筋群である大胸筋と背中に適応するのが望ましいです。
(脚はストレッチ種目がなかなかないため、POF法を実践するのが難しい)
もちろん腕や肩に適応してもOKですが、長くなってしまうので、ここでは大胸筋と背中の具体例を紹介します。
大胸筋のPOF法
- ミッドレンジ種目:ベンチプレス(インクラインベンチプレス)
- ストレッチ種目:ダンベルフライ(インクラインダンベルフライ)
- コントラクト種目:ケーブルクロスオーバー
大胸筋は中部狙いの場合はフラットベンチを使ったベンチプレスとダンベルフライがおすすめ種目ですが、上部を発達させたい場合はインクラインベンチを用いてもOKです。
大胸筋を満遍なく鍛えたい場合は、1種目目にベンチプレス、2種目目にインクラインダンベルフライと使い分けても良いでしょう。
背中のPOF法
- ミッドレンジ種目:懸垂
- ストレッチ種目:プルオーバー
- コントラクト種目:ケーブルローイング
背中は主に広背筋と僧帽筋を鍛える必要があります。1種目目の懸垂で背中全体に負荷を与え、プルオーバーで広背筋狙い、ケーブルローイングで僧帽筋狙いにするのが良いでしょう。
しかし背中はストレッチ種目がプルオーバーくらいしかありません。プルオーバーは大胸筋も作用するため、なれないうちは広背筋に効かせるのが難しいかもしれません。
無理にストレッチ種目を入れるよりも、ミッドレンジ種目のラットプルダウンやベントオーバーローイングを取り入れた方が背中を発達させやすいので、私は背中にはPOF法を取り入れていません。それでもラットプルダウンではストレッチを意識するなどPOF法で学んだことを活かしたトレーニングをしています。
▽私が大きい背中を作ったトレーニングは下記記事で紹介しています。
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でもミッドレンジ種目でもストレッチを意識して行ったりすればPOFに近い効果が得られるよ!
最後に
筋肉に負荷がかかる位置によってトレーニング種目をわけるPOF法について紹介しました。
POFを知っておくと、トレーニング種目を決めるのが楽になったり、ストレッチを意識するべき種目かどうかの判断もつくようになります。
POFをそのまま実践することはもちろん、POFの考え方を理解した上で自分流にアレンジしても効果抜群です。
色んな種類のストレスを筋肉に与えてデカくなりましょう!
それではまた!
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