少し前から、Youtubeを見ていても、ネットサーフィンをしていても「HMB」サプリメントの広告を必ず見るようになりました。
どれも非常に”怪しい”広告なので、うさんくさいサプリメントだと疑っている方も多いと思います。
(実際いかにも怪しそうなダイエット系サプリや加圧シャツは効果がありません)
このHMBは実は結構前から研究が行われており、信頼できるデータも多数出てきています。
この記事では最新研究をもとにHMBに効果があるのか、それともないのか、真相を解明していきたいと思います。
この記事を読むと分かること
- HMBとは何か
- HMBの効果
- HMBに関するエビデンス
- HMBは本当に効果があるのか
目次
HMBとは
HMBとロイシンの関係
HMB(beta-hydroxy-beta-methylbutyrate)はロイシンが筋肉中で代謝された物質のことです。
ロイシンは必須アミノ酸の中でも特に筋肥大にかかわるとされているアミノ酸です。
必須アミノ酸は通常肝臓で代謝されるのに対し、ロイシンは筋肉で代謝されることが分かっています。これにより様々な筋トレ効果をもたらしてくれます。
ロイシンの効果
- 筋肉の合成を進める
- 筋肉の分解をおさえる
- 筋損傷の回復を早める
- 持久力を増やす
- 体脂肪を減らす
- 集中力をあげる
血中のロイシン濃度がある一定以上にならないと筋肥大が起こらないとする研究結果もあることから、ロイシンは筋トレにとって最も大切な栄養素といえます。
HMBの効果
このロイシンが筋肉で代謝されてできたHMBも筋肥大に関与していると考えられます。
筋タンパク質の合成を促すmTORを活性化して、筋肉の合成スイッチを押してくれます。
また筋タンパク質を分解する酵素の働きを阻害して、筋肉の分解を抑える効果もあります。
筋肉は常に合成と分解を繰り返していて、そのバランスにより筋肉が増えるか減るかが決まります。
「筋肉の増減」=「筋タンパク質の合成量」ー「筋タンパク質の分解量」
HMBは合成量を増やし、分解量を減らすので、筋肉を大きく増やす作用があると考えられます。
HMBの効果
- 筋タンパク質の合成を促進する
- 筋タンパク質の分解を抑制する
HMBは効果がない?主要な研究一覧
ここまで説明してきたHMBの効果が本当に起こるのかを確かめるために、HMBに関して調査した研究事例を紹介します。
結論からいうと「HMBは初心者には効果があるが、経験者には効果がない」です。
また初心者は筋力向上には有効ですが、筋肥大効果については限定的です。
この記事で紹介するエビデンス一覧がこちらになります。
HMBに関するエビデンス一覧
- 1996年:HMBは筋力・筋肥大ともに有効
- 2009年:初心者に限り、筋力向上に有効
- 2018年:経験者にはほとんど効果がない
1996年の研究ではHMBに効果があるとされていましたが、その後行われた2つの研究ではHMBの効果が限定的だと結論づけられています。
2009年と2018年の研究はメタアナリシスと呼ばれる信頼性の高い研究手法なので、現段階では「HMBに大きな効果はない」と思った方が良いでしょう。
1996年 効果あり
1996年にアメリカで発表された研究でHMBの有用性が報告されました。[1]
この研究ではHMBを一日に0、1.5、3gを摂取するグループに分けて、重量挙げを行い、筋力を比較しています。
その結果がこちらです。
上半身と下半身の筋力合計
このグラフを見るとHMBを摂取すればするほど筋力が大きく向上しているのが分かります。
この研究ではHMBを3g摂取した群とプラセボ群の筋肉量も測定しています。
それがこちらになります。
プラセボとHMBの除脂肪体重比較
プラセボに対してHMBを摂取した群は除脂肪体重が増えていることが分かります。
さらにHMBに筋分解を抑制する効果があるのか調べるために被験者の尿を採取して「メチルヒスチジン」の量を調査しています。
筋肉が分解されるとメチルヒスチジンが尿中に多数出現するのですが、HMBを摂取することでメチルヒスチジンの量が減少していることが分かりました。
このことからHMBには筋肉の分解を抑える効果があり、それにより筋肥大が促進されたと結論付けています。
2009年 初心者に限りわずかに効果あり
続いて2009年に「HMBはトレーニング未経験者にとって有効だが、経験者にとってはわずかな変化しかもたらさない」というメタアナリシスが報告されました。[2]
この研究は2007年までに報告されている9つの研究をもとに解析を行っています。
結果がこちらになります。
トレーニング未経験者は「筋力向上」効果が見られました。しかしトレーニング経験者はごくわずかな変化しか起きていません。
また筋肉量についてはトレーニング経験の有無にかかわらず、ほとんど効果がありませんでした。
この研究からHMBは筋肥大には効果が小さく、トレーニング未経験者にとっては筋力向上効果があることが分かりました。
2018年 経験者には効果なし
2018年に報告されたメタアナリシスでは、2017年までに報告されているHMBのトレーニング効果に関する複数の研究を統計的に分析しています。[3]
このメタアナリシスではベンチプレスとレッグプレスの強度、体重、除脂肪体重、脂肪量に関するHMB効果を調べた6つのランダム比較試験を解析しました。
対象者はトレーニング経験者になります。
結果がこちらです。
効果サイズ(ES) | p値 | 判定 | |
ベンチプレス1RM | 0.00 | >0.05 | 有意性なし |
レッグプレス1RM | 0.09 | >0.05 | 有意性なし |
体重 | -0.01 | >0.05 | 有意性なし |
除脂肪体重 | 0.16 | >0.05 | 有意性なし |
脂肪量 | -0.20 | >0.05 | 有意性なし |
残念ながら、ベンチプレスやレッグプレスの1RMに変化は見られませんでした。
また体重・除脂肪体重・脂肪量に関しても統計的に有意性は見られません。
したがってトレーニング経験者にとってHMBは「筋力向上効果も筋肥大効果もない」ことになります。
HMBよりもプロテインをしっかり飲もう
残念ながらHMBは筋トレ効果を本当に高めるのかはっきりしていません。
しかし明らかに効果がある栄養素なのであれば、もっとポジティブな結果が出ているはずです。
またHMBの広告に「プロテイン20杯分」「プロテインをまだ飲んでいるの?」など、HMBがプロテインの代用になると思わせるキャッチフレーズが使用されています。
しかしこれは大間違いです。
HMB単体では、筋肉を作れという指令を出すことはできても、実際に筋肉を作ることはできないのです。
筋肉を合成するには必須アミノ酸9種類がすべて必要になります。それに対してHMBはロイシン代謝物なので、筋肉を構成することはできません。
プロテインは必須アミノ酸をすべて含んでおり、筋肉の材料にもなってくれます。
またホエイプロテインを選べばロイシンも多量に摂取できるため、筋肉を作れという指令も出せます。
HMBサプリメントを飲むまえに、一日に必要なタンパク質量が足りているか確認してください。
そして普段の食事だけではタンパク質が足りない場合は、まずプロテインを飲むことから始めてください。
▽自分の体格・年齢にあった適切なタンパク質摂取量を計算しましょう。
自分に合ったプロテイン摂取量を自動計算【1回/1日当たりの摂取量】
そのうえで更に筋肥大を高めたいときにHMBをはじめとする様々なサプリメントを試すと良いでしょう。
まとめ
- HMBはロイシン代謝物でmTORを活性化する
- 筋タンパク質の分解を抑える効果も確認されている
- しかし最新研究によるとHMBの効果はかなり限定的
- トレーニング初心者には有効、経験者には効果なし
上手にサプリメント使って、ボディメイクを加速しましょう。
私が今まで飲んできたサプリの中で効果があったものを紹介しているので参考にしてください。
-
筋トレに必要なサプリメント5選!優先順位と1ヶ月の費用も合わせて説明
続きを見る
-
【L-シトルリン レビュー】筋トレでレップ数向上・疲労軽減効果を実感
続きを見る
-
BCAAとEAAの違いを徹底比較!どっちが筋トレ・筋肥大に効果的なのか?
続きを見る
最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた!
参考文献
[1]Effect of leucine metabolite β-hydroxy-β-methylbutyrate on muscle metabolism during resistance-exercise training.
[2]Effects of β-Hydroxy-β-Methylbutyrate Supplementation During Resistance Training on Strength, Body Composition, and Muscle Damage in Trained and Untrained Young Men: A Meta-Analysis.
[3]Effects of beta-hydroxy-beta-methylbutyrate supplementation on strength and body composition in trained and competitive athletes: A meta-analysis of randomized controlled trials.